アジアでカジノを多角的に展開しているゲンティン社
マレーシア唯一のカジノで独占的にビジネスを展開しているゲンティン社ですが、今や全アジアで事業を展開しています。持ち株会社に下にゲンティン・マレーシア、ゲンティン・プランテーションズ、ゲンティン・シンガポール、ゲンティン香港の4社がぶら下がるグループ形態となっています。
この内、パームオイルの製造を主としているゲンティン・プランテーションズの除く3社はカジノをメインの事業としていて、ゲンティン・シンガポールはシンガポールのカジノをマリーナベイサンズと2分しているセントーサ島のリゾートワールドセントーサを運営しており、ゲンティン香港はカジノが船内で楽しめるスタークルーズやクリスタルクルーズなどのクルーズ会社や、マニラの巨大カジノリゾートであるリゾートワールドマニラを運営しています。
ちなみにこの連載で紹介したカリブ海のクルージングを展開しているノルウェイジャン社の株式もゲンティン香港が以前に所有していて、今でも株式の30%近くを所有しているなどカジノだけでなくクルージングなど世界の余暇ビジネスにおいても大きな存在感をゲンティン社は示しています。
ゲンティン社は、今やマレーシアビジネス界の伝説とされているリム・ゴートン氏により設立され、マレーシアでのカジノライセンスを1971年から独占して、ゲンティン・ハイランドを50年近くにわたって拡張してきました。マカオのカジノライセンスも以前はスタンレー・ホー氏が独占していましたが、今では米国のカジノ運営会社を含む複数のライセンスが発行されているため、ゲンティン・マレーシアはアジアで最後の独占カジノオペレーターと言えます。
ゲンティン社は、現在リム・ゴートン氏の次男であるリム・コクテイ氏がCEOとして率いています。巨額の設備投資が必要なカジノ運営会社は、ゲンティン社もまさにそうですが創業者や創業ファミリーが大きな比率の株式を所有してトップダウンで果断に意思決定を行うことが大きな競争優位となります。ゲンティン社だけでなく、所有と経営の分離が進んでいる米国でも、サンズ社のシェルドン・アデルソン氏や、ウィン社のスティーブ・ウィン氏など創業者の影響力が強く、このあたりの業界構造は今後カジノを新設する日本においても海外のオペレーターに運営を任せたほうがよいとする強い論拠となっています。
次回はよりアジア全体のカジノ事情を俯瞰しながら、日本のカジノの成否を占いたいと思います。
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