たった4回の訪問で市民権(国籍)を取得
このマルチビリオネアであるピーター・ティールがニュージーランドの市民権を取得したというニュースは欧米のメディアで大きく報じられました。前回のコラムでも紹介したように1,000万NZD(約7.7億円)をニュージーランドの債券や不動産に投資をして、3年間で約90日の滞在をすれば永住権を取得できる投資家永住権制度が外国人富裕層には用意されています。
しかし、外国人が市民権(国籍)を取得するには、政府のWebサイトによると5年間にわたって毎年最低70%以上をニュージーランドで過ごす必要があると書かれています。ピーター・ティールは国籍取得までにたった4回だけしかニュージーランドを訪問したことがないと報道されており、この要件を満たしていないことは明らかです。
世界的な大富豪に便宜を図って、お金で市民権を販売していると野党は現政権を批判しています。一部報道では、ピーター・ティールがトランプ支持者であるにもかかわらず、トランプ政権が米国を滅茶苦茶にしてしまうことに備えて、逃げ道を作っていると批判する声が上がっていましたが、国籍取得は2011年3月なのでこの批判はあたりません。
ピーター・ティール自身はニュージーランドをユートピアと呼んでいて、ロード・オブ・ザ・リングの大ファンだからニュージーランドを気に入っていると話しているようです。確かに、上記のパランティールもピーター・ティールが経営するファンドであるミスリル・キャピタルも名前をロード・オブ・ザ・リグから取っているので、ファンであることは本当でしょうが、これをそのまま真に受ける訳にはいきません。
実際に、ピーター・ティールだけではなく、シリコンバレーの何人かの大物がニュージーランドに不動産を取得しているようです。この動きについて、ピーター・ティールの友人で同じくペイパル・マフィアの一員であるリンクドインの創業者リード・ホフマンは、「富豪の間でニュージーランドに家を買ったという会話をすれば、それが何を意味するかはわざわざ言わなくても分かる」と話しているようです。
そして、その次には核シェルターを購入したかといった話題になるとまで言及しているので、ピーター・ティールを含めて大富豪たちがニュージーランドの市民権を取得したり、不動産を取得したりする背景には、第3次世界大戦のような巨大な災害のセーフヘイブンを求めていることは間違いないでしょう。
ピーター・ティールもニュージーランドでは近隣に大きな街がないワナカ湖周辺に広大な土地を取得しているらしいので、この場所をそうしたセーフヘイブンとしての拠点と考えているのでしょう。
ピーター・ティールは著書「ゼロ・トゥ・ワン」の中で、ビジネスにおいては競争を徹底して避けるべきであり、他に誰も賛成しない事実に思い切ってリソースを投じることの大切さを繰り返し強調していますが、ニュージーランドの国籍を取得したときに彼が想定しているような他の誰も心配していない大災害が現実になることはないように願っています。
日本人の富裕層の間でもニュージーランド移住への関心は高まってきており、これからますます訪問する機会が増えそうなので、うまく世界から移住して来ている大富豪たちのコミュニティに潜り込んで、彼らがどのような終末への備えをしているのか調べてみようと考えています。
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