マニラのハイローラー事情

Nobu Hotel

これらのレストランに加えて、シティ・オブ・ドリームスには複数のブランドのホテルが展開していますが、世界的に人気の高級日本食レストランであるNobuが運営するホテルまでありました。Ｎｏｂｕは、日本人シェフでビバリーヒルズに出店したレストランMatsuhisaが人気となっていた松久信秀氏が、この店の常連だったハリウッド俳優のロバート・デ・ニーロをビジネスパートナーとして共に作り上げた高級日本食レストランのチェーンで、今では５大陸の主要都市をほぼ制覇するところまで拡大しています。

この成功を受けて、レストランと同じNobuブランドのホテルも展開し始め、現在ではマイアミ、ラスベガス、マリブにマニラと４つのホテルを運営しているようです。米国以外の初めてのNobuホテルをマニラに持ってくるあたりに、シティ・オブ・ドリームスを運営するオーストラリアのメルコ・クラウン社がいかにマニラを重要視しているかが伝わってきます。

Nobuホテルの事業も順調の様で、今年中にロンドンとイビサ島、さらにはサウジアラビアのリヤドへの展開が決まっていて、来年以降も続々とホテルを増やしていくようです。マニラのNobuホテルには、レストランのNobuもありますが、プールサイドに金ピカの豪華な外装で、オカダマニラではあまり見かけなかった欧米系の観光客がゆったりとした時間を過ごしていました。

各ホテルのハイローラー戦略

世界でも珍しい高級ブランドのホテルを誘致し、高級レストランもそろえることで富裕層を取り込むシティ・オブ・ドリームスの戦略はうまく行っているようです。そして、シティ・オブ・ドリームスはハイローラーのマニラへの誘致でも先行しているようです。

現地で手広くビジネスを手掛けていて、カジノ事情にも自身が好きでよく通うので詳しい日本人の知り合いによると、プライベートジェットでマニラ国際空港に着いたハイローラー客をヘリコプターで直接ホテルに運ぶサービスをシティ・オブ・ドリームスでは展開していて、このヘリが頻繁に空港とホテルを行き来していることから、マカオで監視の目が光って派手に遊びづらくなった中国人本土のハイローラーをマニラに連れてくることに成功しているようだと話していました。

一方、オカダマニラのカジノのVIPフロアはまだオープンしておらず、ハイローラーの誘致はこれから本格化していくのでしょうが、複数の都市でメガカジノリゾートを展開しているメルコ・クラウン社と異なって、他の都市のリゾートからハイローラー客を連れてくるわけにはいかず、どのようにハイローラーにリーチしていくのかその戦略に注目しています。

現地の報道によると、岡田氏はフィリピンのパラワン島やダバオなどに新たなリゾートを作る計画を進めているようです。このリゾートにはゴルフコースも併設する計画のようなので、ラスベガスではハイローラー向けにメガカジノリゾートが専用のゴルフコースを作ることは一般的な戦略ですから、フィリピンに新たなリゾートを作ってこれと連動してオカダマニラにハイローラーを誘致しようとしているのかもしれません。

この連載の40回目でも紹介したように、シンガポールとマレーシアでメガカジノリゾートを運営するゲンティン社も2020年までに、今回紹介した３つのカジノリゾート同じベイエリアに新たなIR施設を完成させる計画です。

フィリピン政府もマニラのメガカジノリゾートのライセンスについてはこの４つでしばらく打ち止めにする方針ですから、オカダマニラの施設がフル稼働して、さらにゲンティン社のリゾートワールドブランドのIR施設も出そろったタイミングで、各社がどのようにハイローラーを獲得できるのか、マニラのカジノリゾートについては定期的に訪問しながらその趨勢を見極めていこうと考えています。

岡村聡 (おかむらさとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA／中経出版)など。

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