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コミュニティへの貢献を目指すスンバ財団

スンバ財団の理念

スンバ財団自体は、2001年にクロード・グレーブスとショーン・ダウンズという2人によって設立されました。クロード・グレーブスは1989年にスンバ島の環境にほれて移住をして、後にニヒ・スンバという世界的なリゾートに成長することになる、サーファーたちのための簡易な宿泊施設を作ります。

前述したクリストファー・バーチ氏にリゾートの経営権を譲った後に、クロード・グレーブスはスンバ財団の活動に専念しています。ニューヨーク証券取引所の幹部などを務めたビジネスマンで、スンバ島を初めて訪れた時に現地の文化とコミュニティに感動したショーン・ダウンズと意気投合し、2001年に島の文化やコミュニティを維持することを目的としたスンバ財団を設立します。

スンバ財団の活動目的は大きく3つあって、ニヒ・スンバがあるスンバ島の西側地区を中心として、島民への安全な水と医療、さらには教育を提供することを目的としています。水については設立以来60の井戸を掘って、240の貯水槽を提供しています。

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スンバ島のローカルが通う小学校。

ヘルスケアについての大きな功績は、島民へのマラリアの予防接種を進めることで、マラリアへの感染率を財団設立前から6分の1以下にしたことがあげられます。また、島民が医療にアクセスしやすいように、島西部に数多くの診療所も開設しています。こうした診療所によりこれまで医師による診察を受けられなかった25,000人の島民たちが、新たに定期的に医療にアクセスできるようになったようです。

最も目覚ましい成果を上げているのが教育についてで、これまでに16の小学校の設置や、学校への水の供給、トイレの整備、机やいす、さらには図書室への本の寄贈を行ったと財団のWebサイトで成果が強調されていました。空港からリゾートへの道中にもいくつかの小学校へかなりの距離を歩いて通う子供たちの姿を見ましたが、皆嬉しそうな表情をしていたことが印象的でした。

こうした設備面の整備だけではなく、古いコミュニティでは特に女の子に教育を受けさせることの価値を理解しない島民に対して啓もう活動を行ったり、貧しい家庭の子供たちのために学校で朝食を提供したりするなどソフト面でも様々な活動を行っているようです。

スンバ島の島民は私たちの滞在中ずっとお世話をしてくれたロベルトを始め、前述した現地の村の生活を視察している時も多くのローカルが観光客にとても人懐っこく接してくれました。スンバ島のような離島に高級リゾートができると、ホテルの関係者やゲストと現地のコミュニティとの間に軋轢が生じるケースもままありますが、スンバ島では島の環境に配慮したエコなリゾートのあり方と、スンバ財団による現地コミュニティへの貢献で非常に良好な関係が築かれています。

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ニス・スンバの多くの内装は現地の木材や石材で作られている。

ニヒ・スンバとスンバ財団の2つの組織で400人の従業員を雇用していて、この数字はスンバ島で最大です。その多くが現地出身の人たちで、ニヒ・スンバというリゾートは島民たちにとって雇用においてもとても魅力的な機会を提供しています。

サステイナビリティの観点からエコを標榜するリゾートは増えていますが、現地コミュニティに多大な貢献をしてコミュニティ全体のサステイナビリティを高めるスンバ島の取り組みは世界の最先端を行っていると感じました。

次回は、ドバイの最新リゾートについて紹介します。

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岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA/中経出版)など。

連載コラム

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岡村聡 著
 
『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』
KADOKAWA 1,540円(税込)
 
日本とシンガポールで、超富裕層を対象にファミリーオフィスを経営する著者が、「本当の富裕層」から学んだ、お金を使いこなし、豊かな人生をおくる術を解き明かす一冊。

岡村聡

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