前回はドバイショックから完全に立ち直り、新たなフェーズへとステップアップしつつあるドバイについて紹介しました。今回はドバイと同じUAE (アラブ首長国連邦)に所属する、お隣のアブダビについてです。
ルーブル美術館のアブダビ分館
アラブ首長国連邦は、アブダビ・ドバイ・フジャイラ・シャルジャ・アジュマン・ラスアルハイマ・ウンムアルカインの7つの首長国からなりますが、アブダビは面積で全体の80%を占め、人口でもGDPでもドバイを抑えてUAE最大を誇っています。
ただ、国際的な知名度ではバージ・アル・アラブやバージ・ハリファといった世界一の建物を立て続けに完成させて、さらにこちらも世界一の外国渡航者数をさばく空港まで整備し、今や世界に冠たる国際観光都市となっているドバイに比べると、アブダビは大きく出遅れました。
次回に詳しく紹介しますが、ドバイは2020年の万博の開催場所として決定していて、さらには仮想通貨やドローンなど先端テクノロジーの分野でも国家をあげて大規模な取り組みを行っており、観光を起点としたビジネス分野で国際的なプレゼンスを上げていこうと注力しています。
一方のアブダビは、膨大な原油埋蔵量を所有しており、ドバイのように都市国家として観光などビジネスのハブとなって外貨を獲得する必要性は薄いために、文化やスポーツといった分野を中心として国際戦略を練っています。
その象徴となる施設が最近、アブダビに完成しました。それは写真にあるルーブル美術館のアブダビ分館で、フランス人の著名な建築家ジャン・ヌーヴェル氏が海上に設計した巨大な施設です。
建築費は推定7億ドル(約760億円)で、施設の大部分が海上に張り出していて、建物全体が直径100メートル以上の円盤型のファサードで覆われています。
アブダビ分館は昨年11月に開館したばかりで、まだ展示物は充実していないために、建物の方に強い印象を持ちました。ジャン・ヌーヴェル氏は日本では汐留にある電通の本社ビルが有名で、「光の建築家」という異名で通っているらしいですが、まさにその名に恥じない建築物で、まるでうっそうとした森からさす木漏れ日のように、モダンアートが立ち並ぶ中庭にファサードをぬけた光が差しこむ姿は幻想的で美しかったです。