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The Style Concierge

UAE 2/3 
文化戦略で世界トップを目指すアブダビ

文化・スポーツ面で世界一のモノを

このルーブル美術館のアブダビ分館の建設には当初、フランスを中心として多くの反対がありました。その反対を、ルーブルというブランド名の使用料として30年間で約5.3億ドル(約580億円)、作品の貸出料や特別展示など美術館運営上のアドバイス料として約7.5億ドル(約820億円)という巨費をフランス政府に支払うということで振り切りました。

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展示物についてはルーブル美術館の本館と比べてまだ数十分の1の規模で、地域を問わず同時代のモノを横比較で展示するなど興味深い工夫も見られますが、ルーブルという名前で連想するレベルにはいたっていません。

ただ、そこはノルウェーに続いて運用資産約8,300億ドル(約91兆円)という巨額の政府系ファンドを有していて、世界で屈指の資金力のアブダビ王家ですからお金で解決していくようです。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画で唯一美術館が所蔵していなかった、男性版モナ・リザとも呼ばれる「サルバトール・ムンディ」を、クリスティーズのオークションで約4.5億ドル(約500億円)という史上最高額で落札したのは、アブダビ政府の文化・観光局だと言われています。

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アブダビやドバイといったUAEの構成国は首長国と呼ばれているように、SWFや政府系企業の要職のほぼ全て王族がつとめていて、巨大な政府の収入を王族が取り仕切っていますが、アブダビの王族はこのようにドバイが弱い、アートなど文化的な面に注力して史上最高や世界一の称号を獲得してきています。

ルーブル美術館以外にも、アブダビはF1グランプリや「空のF1」とも呼ばれるレッドブル・エアレースなど国際的に人気の高いスポーツイベントも開催しています。特にF1のアブダビGPは、マリーナ沿いにエキサイティングな専用コースが整備されていて、紺碧色のアブダビ海にスーパーヨットが立ち並ぶマリーナの横を時速300kmオーバーでF1カーが疾走する様子は、中東版のモナコGPといった様相です。

アブダビには世界で初となるフェラーリのテーマパークもあり、目玉のアトラクションは空母で戦闘機を打ち出す時に使われる蒸気カタパルトにより5秒で時速240kmという、コースターとしては世界最高のスピードまで一気に加速するフェラーリ・コースターです。今回は小さな子供連れということで訪れませんでしたが、7年前に訪れた時は大の大人が何度も取りたくなる刺激的なアトラクションでした。

岡村聡

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