補完しあうドバイとアブダビ

このように隣接しているアブダビとドバイは、分野をうまく分けながら世界一や世界最大の施設をお互いにいくつも作っています。

将来的には、現在世界最高の起業家とされるイーロン・マスクが手掛けているハイパーループという、真空チューブの中を音速に近い車両が疾走する次世代型の超高速交通機関が整備されて、現在車で１時間半ほどかかるアブダビ～ドバイ間を10数分で結ぶ計画まで浮上しています。

エネルギー収入で潤い文化やスポーツに注力する落ち着いたイメージのアブダビは長男で、何事にもアグレッシブで巨大なスケールや斬新さで注目を集めるドバイは次男坊的なキャラクターとして紹介されることがよくあります。

実際に、2009年にはアグレッシブな不動産開発がリーマンショック後の世界的な景気後退で持続不可能となり、ドバイの政府系企業の多くが資金繰りに苦しむ事態となりましたが、最終的にはアブダビ政府が兆円単位の資金援助をドバイ政府に提供したことで収束しました。

前回のコラムでも紹介した世界最高層のビル、「バージ・ハリファ」のハリファはアブダビ王家の名前からとられていますが、このタワーはバージ・ドバイという名称のもとで完成間近まで建設されており、このタワーが完成する直前のタイミングで債務危機から救済してもらった見返りとして、ドバイの王族が名称をアブダビ王家の名に変更したと噂されています。

同じ国を構成しながらも、キャラクターや注力している分野が大きく異なるアブダビとドバイが切磋琢磨しながら、旅行先としては両者が一体となってさらに魅力的である場となっていくことを期待しています。

岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA／中経出版)など。

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