ここまで2回にわたって、ドバイやアブダビなどのUAE(アラブ首長国連邦)について紹介してきましたが、最終回となる3回目はUAEの未来を占いたいと思います。(1/3から読む)
2020年のドバイ万博
まず、ドバイについてですが、近い将来で最重要に位置付けられるイベントが2020年の万博です。日本人には2005年の愛知万博の印象が強いかもしれませんが、それ以外の直近の開催場所を見ても92年セビリア(スペイン)、00年ハノーヴァー(ドイツ)、10年上海(中国)、15年ミラノ(イタリア)と、欧州とアジアばかりの開催となっていて、日本では万博と呼ばれる国際博覧会の一般博が、中東・アフリカ地域で開催されることは初めてです。
中東での大規模な国際イベントとしても、2022年にUAE(アラブ首長国連邦)の隣にあるカタールでサッカーのワールドカップが開催されますが、これが中東での初めての開催でオリンピックの開催もこれまでにないために、2020年の万博は国際イベントとして中東エリアで史上最大規模となることは間違いありません。
ドバイ万博のテーマは、”Connecting Minds, Creating the Future (協調性をもって未来を創造しよう)”で、特に自然エネルギーなどを活用したサステイナビリティのある交通インフラの整備を主眼としています。2020年10月~21年4月までの半年間の開催を予定しています。万博としては史上最大の規模で、万博関連で30万人近くの雇用と400億ドル(約4.5兆円)のビジネスを創出し、年間約2,500万人のドバイを訪れる外国人観光客を1億人にまで拡大することを目指しています。
高さ828mを誇り、世界最高層のビルである「バージ・ハリファ」や世界で唯一の7つ星ホテルといわれる「バージ・アル・アラブ」があるドバイらしく、万博に向けて新たなランドマークの建設も予定されています。それは、ドバイの大手ディベロッパーであるエマールが手掛ける「ドバイ・クリーク・タワー」で、詳細な高さはまだ発表されていないものの、1キロを超えると見られています。
このタワーと同時期にサウジアラビアのジェッダにも高さ1キロほどのビル「ジェッダ・タワー」が建設される予定ですが、世界最高層建造物のタイトルの死守をドバイは目指すようです。
万博のテーマである交通インフラについても、世界初のハイパーループが建設されるという目玉があります。ハイパーループは、スペースXやテスラを手掛けるイーロン・マスクが取り組んでいることで世の中の知名度が上がりましたが、ドバイでの建設にかかわるのはイーロン・マスクではなく、リチャード・ブランソン率いるヴァージングループの子会社です。
ハイパーループは減圧されたチューブの中を高速鉄道のような形状をした車両が時速1,000㎞以上の超高速で移動する交通システムで、日本で建設されているリニアモーターカーの10分の1程度のコストで整備できるとされています。2020年の万博のタイミングまでに整備されるのは長さ10㎞ほどの試験線ですが、最終的にはドバイとアブダビの中心部を結ぶ約160㎞のハイパーループが整備され、現在自動車では2時間近くかかる両都市間の移動を、約12分まで縮める計画です。