都市部でもテック企業のオフィスが目立つ
アップルやフェイスブックの本社が存在する郊外ではなく、より若いメガテック企業はサンフランシスコ市内に本社施設を持つことが増えています。その代表格が、SaaS時代の勝ち組であるセールスフォースドットコムです。
その本社ビルはサンフランシスコで最高層で、市内のどこからでも目立つことに加えて、隣接しているビルの屋上に公園まで整備されていて、プレイグランドでは子供が無料で遊べます。この屋上公園は地上とガラス張りのロープウェーで結ばれているなど遊び心も満載です。こちらのセールスフォースパークにも屋上であるにもかかわらず、多数の植物が植えられていて、上記のアップルやフェイスブックの本社施設と共通するセンスを感じました。
サンフランシスコに限らず、米国の大都市部ではテック企業のオフィスが拡張していますが、そのトレンドが最も顕著なのがシアトルです。シアトルのテック企業といえば少し前までマイクロソフトが盟主でしたが、マイクロソフトは郊外のレドモンドに本社を置いている一方、アマゾンは市中心部に多数のオフィスを展開しており、一般人の生活に占める役割も拡大の一途を辿っていることから、アマゾンの存在感がマイクロソフトを上回ってきています。
ただ、倹約で知られるその社風からアマゾンの本社施設はアップルやフェイスブックと比べると際立った建物はありません。唯一目立つ施設といえばSpheresと呼ばれる球体のガラス張りの建造物です。Spheresは、アマゾンの社名をモチーフとしていて、本家の熱帯雨林を模して50ヵ国から集められた40,000種類の植物が生育されている温室となっています。この植物はシアトル近郊で3年間生育されたのちに、この施設に運び込まれました。内部は温度と湿度が一定に保たれいますが、植物を育てる温室としての機能だけでなく、会議室やエレベーターなどオフィススペースも確保されています。
このように、米国では都市部を中心としてメガテック企業のオフィスの存在感が高まってきていますが、同時に負の側面も目立ってきています。シアトル中心部のオフィスの実に20%近くをアマゾンが占めるようになったことで、オフィスの需給がひっ迫しシアトルのオフィス賃料は上昇の一途を辿っています。アマゾン自体がその高騰を嫌って、全米の自治体に呼び掛けて第2本社を置く場所を公募し、ワシントンとNY郊外に決めましたが、不動産の高騰を嫌った地元からの反発でNYの第2本社計画は頓挫してしまいました。
オフィス賃料だけでなく、市中心部に高報酬を得るメガテック企業のエンジニアたちが大量に流入したことで家賃も高騰し、その結果ある程度収入を得ていても契約できる家が見つからずホームレスとなってしまうケースも増えています。メガテック企業が多数本社を置き、全米でも最も富裕層が多いサンフランシスコがホームレスの数でも全米屈指となっている皮肉な状況です。