グローバルに展開するギガファクトリー
そして、このテスラの人気は米国以外にも波及しています。特に顕著なのが欧州で、その中でもノルウェーとオランダでは、高級車に限定しないすべての自動車のモデル別の販売台数で、テスラのモデル3がトップとなっています。環境意識が高い北欧諸国ではEVの販売を促進する様々な政策が打たれており、ノルウェーでは2025年までにガソリンやディーゼル車の新規販売を停止することを目指しています。
また、こうした環境意識の高い裕福な小国だけでなく、英国でも2019年の月別の販売台数で、すべての車種の中でテスラのモデル3がトップ3に入る月があるなど人気となっています。こうしたテスラのEVのグローバルでの人気を受けて、電池の供給体制を強化するために、テスラの巨大電池工場であるギガファクトリーを海外にも設立する動きが広がっています。
テスラのギガファクトリーは、日本では協業しているパナソニックの業績とからめて報道されることが多くなっています。最初のギガファクトリーは米国のネバタ州に総工費約50億ドル(約5,500億円)という巨費を投じて設立され、その生産規模は2018年半ばには年間20GWhペースとなり、単一工場で世界最大規模となっています。
その後、2つ目のギガファクトリーがNY州のバッファローに作られ、3つ目は世界最大のEV市場である中国の上海に設立されています。上海のギガファクトリーは中国での自動車業界における外資規制の緩和を受けて18年7月に上海市と協定を結び計画が発表され、19年1月の着工からわずか11カ月でモデル3の生産が開始されるなど異例の速さで立ち上げられました。
ちなみに、この上海のギガファクトリーでは、パナソニックではなく韓国のLGが共同事業者となっています。中国政府としては、EVを核とした自動車産業における中国メーカーの躍進を狙っており、中国企業でバッテリーの生産規模としては世界最大となっているCATL社とテスラの協業も交渉中のようです。
テスラのCEO(最高経営責任者)は、スティーブ・ジョブズ亡き後において世界最高のカリスマ経営者だと衆目の一致するイーロン・マスクですが、この上海のギガファクトリーの成功に満足することなく、4つ目のギガファクトリーには高級乗用車セグメントで最大のライバルとなるメルセデスやBMW, Audiといったブランドが本拠を置くドイツのベルリンを選択しました。