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コロナでプライベートジェットが活況

今後のフライトの在り方

ただ、こうしたチャーター便の利用拡大が新規のプライベートジェットの購入に繋がるのかはまだ不透明です。上記のように近郊の都市であれば100万円以下でも利用できるチャーター便に対して、自家用ジェットを所有しようとすると最低でも数億円の購入費に、整備・維持費も年間1,000万円以上かかってきます。チャーター便が資産100万ドル(約1.1億円)以上の富裕層が十分に対象となってくる一方、自家用ジェットの所有は金融資産3,000万ドル(約32億円)以上の超富裕層でなければ現実的ではありません。

自家用ジェットについてはボーイングやエアバスに加えて、ボンバルディアやエンブラエルといった中型機メーカーに、ガルフストリームなどの専業メーカーなど様々なプレーヤーが機体を製造していますが、各社の報告を総合すると2020年は前年から販売数は30%ほど減少する見込みです。

さすがにコロナを受けて大きな金額の消費には超富裕層といえども慎重になっているようですが、来年には商用ジェットに先駆けて自家用ジェットの販売が回復するという見方も出てきています。その理由は米国・中国を中心として超富裕層やさらにリッチな富豪たちが資産額を増やしていることにあります。

コロナでDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速したことで、米国を中心としたテック企業の業績が好調で、株価も最高値圏で推移していることで、米国のテック関連のビリオネア(資産が10億ドル(約1,050億円)以上の大富豪)の資産はなんと年初来で2,500億ドル(約26兆円)以上も増加しています。米国に続いて中国でもテック企業の株価が好調な上に、IPO(新規上場)マーケットも活況を呈しており両国を合わせて今年だけで1,000人近いビリオネアが誕生しています。

コロナ禍でもこのように富豪の人数は逆に増えており、来年にかけて自家用ジェットの購入が増えれば、空き時間にシェアリングに提供する機体数も増えて、チャーター便の価格もさらにリーズナブルになり、航空機の関連市場も本格的に回復してくるでしょう。

私自身、ここ数年は年間50~100回も国際線フライトを利用する生活でしたが、コロナのロックダウンで強制的にエアラインを利用できなくなったことで、運動を毎日コンスタントにできて、体重も10kg以上落ちて体調も良くなりました。ズームによるミーティングで十分にお客様とのやり取りも行えることが分かったので、コロナが終息したとしても以前のように長距離フライトを頻繁に利用する生活に戻りたいとは思いません。

周囲でも同じようなことを言っている人は多くいます。コロナによる大打撃を受けたエアライン業界が復活するには、家族での思い出作りを特別にするチャーター便などハイエンドマーケットをいかに取り込むかにかかっていると思います。来年以降の航空業界など輸送全般の回復にはハイエンドがキーワードとなると見ています。

岡村聡_300

岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA/中経出版)など。

連載コラム

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岡村聡 著
 
『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』
KADOKAWA 1,540円(税込)
 
日本とシンガポールで、超富裕層を対象にファミリーオフィスを経営する著者が、「本当の富裕層」から学んだ、お金を使いこなし、豊かな人生をおくる術を解き明かす一冊。

岡村聡

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