変異株はアジアでも大きな被害を
3つ目のグループとして、昨年までコロナに比較的よく対応していたものの変異株の拡大により今年に入ってこれまでで最も大きな被害を出している国々があげられます。ここには日本を含むアジアの国々が入っています。
理由についてはまだ確定していませんが、コロナウイルスに対する交差免疫など様々な要因が組み合わさったためかアジアにおける新型コロナによる被害は欧米と比較して軽微に済んできました。しかし、変異株についてはアジアの国々でも大きな被害を出しています。日本についても年初の第3波のピークから改善していたところから、大阪や兵庫などを皮切りとして変異株が急拡大し、1日当たりの死者数も50人を超える日々が続き、4月末から東京や京都を含む4都府県で緊急事態宣言を発令するところまで追い込まれました。重症者の数も過去最悪の数字を更新しそうな勢いです。
日本だけでなく、タイでも4月末に初めて1日当たりの死者数が初めて2桁となるなど、過去の被害は軽微だったもののワクチンの接種で出遅れた国々では、変異株によりこれまでで最大の被害を出しています。より深刻な状況に追い込まれているのがインドやフィリピンで、特にインドは4月後半に入って新規感染者数が1日30万人以上と国別で過去最悪の数字となり、死者数も1日2,000人を超えても上昇し続けています。
最後に、これまでもコロナで大きな被害を出しながら、変異株の拡大によりさらに被害が悪化している国々で、このカテゴリにはブラジルやトルコといった国々が入ります。特にブラジルは4月に入ってから1日4,000人以上という死者数を記録するなど、インドと並んで足元で最も大きな被害を出しています。
ブラジルやトルコ、フィリピンといった途上国では高価でかつ超低温のサプライチェーンが求められるmRNAワクチンには中々リーチできずに、中国製に代表される従来型の不活性ワクチンを中心に接種を進めていますが、特に変異株については効き目が弱く、95%とされるmRNAの有効性に対して50%ほどしか有効性がないという分析が出てきています。
このように米国や英国を筆頭として先進国ではコロナの状況を劇的に改善させている一方、発展途上国の多くは依然非常に厳しい状況にあります。ブラジルやトルコ、ロシアのようにコロナ前から経済が脆弱な国では、コロナの深刻化とともに自国通貨が米ドルに対して大きく下げており、金利も上昇しているために債務負担が大きくなり、デフォルトが頻発して金融危機となってしまうかもしれません。