不動産価格は激しく高騰
このようにグローバルハブとしての存在感をコロナ後にますます高めているシンガポールですが、もちろん負の側面もあります。その最大のポイントは不動産価格の高騰です。
上記のように富裕層を中心として香港からシンガポールに流入し、直近では香港以外にも東南アジア全域や台湾などから、中国による地政学リスクを嫌ってシンガポールに金融資産のみならず、資産管理会社を設立することで居住ビザを取得して移住する人が増えています。
東アジアの富裕層は不動産を所有する意欲が欧米の資産家と比較しても強く、移住に伴ってシンガポールの高級な住居を購入する例も珍しくありません。シンガポールではセントーサコーブと呼ばれるセントーサ島の東半分のエリアと一部の例外を除けば、土地付きの住居を外国人が持てないために必然的に高級なコンドミニアムにその資金は向かいます。
英国のナイトフランク社の統計によると22年にシンガポールでは2,500万米ドル(約35億円)を上回る超高価格な住居が18件販売されて、グローバルで6位となったようです。このランキングはNY・ロンドンが43件で並んでトップとなり、さらにLAが39件で続き、4位に香港が28件で入りアジアの都市でトップとなりました。
異常な地価高騰が起きてきた香港にこの価格帯の販売物件数では差が付きましたが、1,000万米ドル(約14億円)以上で見ると香港の125件に対して、シンガポールの121件とほぼ変わらず、高級な住居が活発に取引されていることが分かります。
富裕層以外にも専門的なスキルを持った高収入のビジネスマンを優遇したビザを新たに設定したこともあり、販売価格だけでなく賃料価格も高騰しています。コロナの規制で新規の住居建設がペースダウンしていたところに、手厚い住居手当が得られるビジネスマンとその家族が流入したことで、外国人が中心に住む高層コンドミニアムの多くはこの2年で激しく賃料が高騰し、7割近く上昇した物件もあるようです。
これがシンガポール人や永住権を持つローカルが住む物件にも波及すると国民の政府への不満も高まるために、シンガポール政府は外国人が住居を購入する場合の印紙税をなんと販売価格の60%にまで高めるなど対策に躍起になっています。
コロナ後に新規住居の建設ペースも加速していることから、外国人向け住居の賃料についてもようやく頭打ちの兆しも見えているようですが、コロナ後に全面再開となったシンガポール経済について、その負の側面も含めてどのように推移していくのか注視していこうと考えています。
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