富裕層に分類される基準は純金融資産が1億円からだといわれる。その理由は前回のコラムでも説明した通り、労働することなく、運用だけで生活できる最低ラインが1億円だからである。つまり富裕層とは不労所得で生活ができる人という意味にもなる。いわゆる富裕層ビジネスのターゲットも基本的には純金融資産1億円からとなっている。
では、実際のところ1億円以上の純金融資産を持つ人は、日本に何人いるのだろうか?各種調査などを総合するとだいたい100万世帯程度といわれている。多いと言えば多いが、全体のわずか1.6%と聞けば、少ないという印象を持つかもしれない。米国には700万世帯以上の富裕層がいるといわれている。経済規模は日本の3倍だが、富裕層の数は7倍となっているので、富裕層の割合は高い。確率で考えると、日本の方が富裕層になるのは難しいのかもしれない。
最近、フランスの経済学者ピケティの著作「21世紀の資本」が大ブームとなった。ピケティは、過去の膨大な歴史データを駆使して、富の蓄積や分配がどのように行われてきたのか実証的に示したのだが、格差問題が大きなテーマとなっている米国で大きな関心を呼び、これが世界的なブームにつながった。
ピケティは、いつの時代も、資産の収益率(r)が所得の伸び(g)を上回っており、これによって富を持つ人とそうでない人の格差が広がると主張している。特に今後は、世界経済の成長率が鈍化することにより、格差が拡大するとの予測だ。
格差が拡大しているというピケティの話は、確かに全世界的なものだが、細かい状況は国によって異なっている。特に欧米各国と日本はだいぶ様子が違うのだが、特に格差の象徴とされる上位1%の富裕層の存在をめぐっては非常に興味深い話がある。