日本の富裕層の多くは普通のサラリーマン
先ほど、日本において資産1億円を超える世帯は100万世帯存在すると書いた。一方、年収ベースのデータでは、トップ1%の人の年収は多くが1000万円台であることが分かった。
世帯数と人数なので同じに比較はできないが、金融資産1億円を持っている世帯が100万であるにもかかわらず、上位1%(約120万人)の年収が1000万円台というのは、ちょっと想像しにくい。
ここにはちょっとしたカラクリがある。それは日本の高度成長と不動産価格の上昇である。日本の場合、高度成長が長く続き、多くの人の給料が長期にわたって上昇した。それと同時に、日本の土地価格も継続的に上がり続けたのである。
相対的に高い給料をもらっていた人は、若いうちに住宅ローンを活用して、自宅不動産を購入していたはずである。そのような人は住宅ローンの期間も短く、ローンが終了した後には可処分所得が増えるので、資金を貯めることが容易である。一部の人は、退職金をもらう頃には、1億円の金融資産を手にしていたという仕組みである。
彼等のライフスタイルは典型的な中間層であり、いわゆる富裕層のそれではないが、書類上は紛れもなく富裕層という扱いになる。また、このような層の高齢者が亡くなり、その不動産を相続した子供にとっては住宅ローンという負担がない。このため、住宅をゼロから購入する層に比べて金融資産を構築しやすく、場合によっては貯金だけでこの金額の資産を作ることができるかもしれない。
つまり、日本の富裕層の多くは、普通のサラリーマンであり、高度経済成長の恩恵を受けたことでその資産を実現した人たちである。このようなメカニズムが存在したことによって、年収が低いにもかかわらず、100万世帯もの富裕層を生み出したのである。
この現実は、今から金融資産1億円を作ろうとする人にとってあまりいい話ではない。日本の場合、かつて不動産の値上がり益を享受できた人か、そのような人から住宅を相続した人が、相対的に有利な立場にある。ゼロからこのレベルの資産を構築できる確率はかなり低いということを理解しておく必要があるだろう。
特にこれからの時代、不動産価格が継続的に上昇する可能性は低い。またIT化などの進展によって、一部のビジネスマンを除くと、継続的に収入が増える環境にはない。その中で、ただ貯金をしていただけでは1億円の資産を作ることはほぼ不可能である。
具体的にどのような方法を用いれば、そのような環境でも大きな資産を作ることができるのかといった話は次回のコラムで展開していきたい。
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