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資産が稼ぐということの意味

事業を何度も売却する人も

中には、事業がある程度の規模に達したらその事業を売却してしまい、まとまった資金を手にする人もいる。その資金はしばらくの間、金融商品で運用し、タイミングを見て次の事業を開始し、その事業がうまく回り始めたら再び売却する。いわゆるシリアル・アントレプレナーである。

このやり方は、場合によっては最速で最大の成果を上げることが可能となる。なぜなら事業の売却には将来性というプレミアが付き、将来獲得する利益を先取りすることができるからである。

先ほどの飲食店を例にして、具体的に説明してみよう。

1店舗が年間に売り上げることができる金額はせいぜい5000万円がいいところである。10%の利益率だとすると年間の利益は500万円ということになる。これが10店舗になると、売上げは5億円になり、事業から得られる利益は5000万円になる。

この時、この10店舗をまとめて売却したらいくらの値段が付くだろうか?

もちろん、売買は売り手と買い手がいて初めて成立するので、値段がいくらになるのはケースバイケースである。しかしながら、事業の売却には、現在価値法といってある程度までなら理論的に価格を求める方法がある。その方法を使っておおまかに計算すると、この事業は理論的に3億円から5億円程度で売却が可能である。

年間5000万円しか利益を上げられないこの事業が5億円で売れる理由は、将来も毎年5000万円ずつ利益を上げる見通しが立っているからである。事業の売却価格には、この将来の見通しまで含まれるのである。つまり売り手にとっては将来の利益の先取りということになる。

このようにして、事業のメドがある程度立った段階で事業を売却し、再び新しい事業を始める人のことをシリアルアントレプレナー(連続起業家)と呼ぶ。米国ではこのやり方で資産を増やす人は非常に多いが、日本でもわずかだがシリアルアントレプレナーの数は増えてきている。
 
残念ながら日本では米国ほど会社の売買が盛んではないが、昔に比べれば、事業の売買は容易になっている。うまく探せば、事業を高値で売却するチャンスはいくらでも見つけ出すことが可能だ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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