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ロッテのお家騒動で、再び注目が集まる循環出資構造とは?

韓国では、多くの財閥がこのような循環出資の形態となっており、サムスングループの循環出資構造も一時、注目を浴びたことがある。循環出資構造は、多くの場合、十分な資金が確保できないことで発生する。

通常は、ある会社に出資してその会社が大きくなれば、増資をして資本を積み増していく必要がある。増資のための資金について、最初の出資者が全額用意できない場合には、第三者の出資者を加えていく必要がある。最終的に不特定多数の株主が入れ替わるのが上場企業であり、会社はこのようにして、規模が大きくなり、そして公の器となっていく。

だが、十分な資金がない中で、支配権を維持しようと思った場合には、関連会社などから、自分の会社に出資をしたり、貸付けを行ったりして、自身の資金を増やし、それを増資に資金に回すというケースが発生してくる。今度は別の会社が業容拡大で増資をする時には、さらに別の会社から資金を融通するという形で、グループ内でお金がグルグルと回ることになる。これが循環出資の実態である。

こうすることによって、わずかな資金でグループ全体を支配し続けることが可能となるが、最終的に誰が会社の主導権を握っているのか、当事者も分からなくなってくる。何もない時はよいが、内部で対立が発生してしまうと、各グループ会社のトップが誰につくのかで状況が刻々変化してしまう。今回のロッテのケースはまさにこれに該当する。

ロッテグループでは、今回の議決を期に、グループの資本関係を透明化するとしている。資本関係の透明化はグローバル企業の要件でもあり、今後さらに業容を拡大していくためには避けては通れない道だろう。

 


加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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