パリで大規模なテロが発生したことで、欧州における難民政策が曲がり角を迎えている。欧州ではシリアなどからの難民が大量に流入しており、これが各地で政治的論争を引き起こしている。
欧州各国における難民に対するスタンスは様々だ。ドイツはこれまで基本的に難民を受け入れる方針を掲げてきており、難民の多くはドイツを目指している。一方、フランスのように難民の受け入れにはそれほど積極的ではなく、難民もあまり好んで滞在しない国もある。
ただパリで同時多発テロが発生したことから、状況は大きく変わった。テロリストが難民に紛れて入国した可能性が高いことから、各国は国境の警備を強化しており、難民が足止めされるケースが増えてきている。また各国も難民の数が増えるにしたがって、これ以上、受け入れたくないとの風潮が高まってきている。ドイツのメルケル首相は、各方面からの批判を受け、難民には一定の制限を設ける方針を明らかにした。しかし、メルケル氏は、何とか受け入れを継続しようと模索しており、ドイツ国内ではせめぎ合いが続いている。それにしても、なぜメルケル氏は、難民受け入れにこれほど積極的なのだろうか。
ドイツはもともと人権をひとつの外交手段として活用してきた国であり、最近では欧州のみならず、世界のリーダーになるという野心を持ち始めている。シリア難民に対しても人道的観点から積極的に受け入れを表明することで、ドイツの国際的地位をさらに高めたいとの思惑があると考えられる。だが、難民を受け入れに積極的なのはそれだけが理由ではない。ドイツは経済と財政が非常に好調であり、難民を受け入れる経済的メリットが大きいということも影響しているはずだ。