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投資家はトランプ時代にどう備えればよいか

基本的によいシナリオが描ける米国と異なり、日本にとっては、トランプ政権の誕生が必ずしも追い風になるとは限らない。状況によってはプラスにもマイナスにもなり得る。

もし米国との通商交渉が従来の延長線上で行われ、米国景気が順調に拡大すれば、日本は円安の恩恵を最大限に享受することが可能となる。自動車メーカーなど製造業の業績も上向くだろう。うまくいけば、2004年から2007年までの好景気と同様のパターンが見られるかもしれない。

しかし、米国の保護主義が過剰となり、円安の効果を十分に享受できないということになると、輸入物価の上昇がマイナスに作用する可能性も出てくる。日本の自動車メーカーは米国向け製品の現地生産化にあたってメキシコにも進出している。NAFTAの見直しとなれば、自動車メーカーのサプライチェーンが影響を受けてしまうので、業績にはマイナス要因だ。

さらに気になるのは金利の動向である。米国が景気の拡大と財政出動で金利が上昇するというのは、ある意味で自然な流れだが、金利上昇がさらに進むと日本にも金利上昇圧力が高まってくる。実際、日本の長期金利は米国につられて上がっており、日銀はこれを抑えるため、指し値オペを実施している。

今のところ日銀の意図は伝わり、金利の過度な上昇は抑制されているが、金利のコントロールが日銀にとっての懸念材料として意識されるようになったのは間違いない。

米国株については、トランプ政権の政策が公約と大きく乖離しない限り、基本的に前向きに捉えてよいだろう。日本株については、トランプ政権の影響が日本にどう及ぶのかについて、見極める時間が必要となりそうだ。少なくとも、政権がスタートするまでは様子見でよいのではないか。米国市場についても過度な金利の上昇はドル高と景気抑制効果をもたらすので注意が必要なことは言うまでもない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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