EUも実は似たようなシステムといえる。EU域内は完全に自由貿易が保証され、外部に対しては同一の関税が適用されるという点では、加盟国による関税同盟と解釈することができる。米国とEUという排他的な巨大経済圏が目の前に存在することを考えると、英連邦各国へのアプローチを強める可能性は十分にあるだろう。
英連邦は大英帝国時代に出来上がった英国を中心とする連邦制度であり、多くの人はすでに消滅してしまったものだとのイメージを持っている。だが制度はなくなったわけではなく、今でも緩い形で英連邦は継続している。構成国の中でもオーストラリア、カナダは先進国であり、かつ資源大国である。またインドという有望な新興国もある。現代では通貨が異なるので、本格的なブロック経済を形成することはできないが、より有利な通商協定を結ぶことは可能である。
もし英国が英連邦国家との通商協定を重視する方向に舵を切った場合、米国、英連邦圏、EU、中国という4つの経済圏が出現することになる。
世界恐慌後に出現したブロック経済は、各経済圏間における深刻な格差を生み出し、第二次世界大戦の原因を作ったともいわれる。豊富な植民地や生産基盤を持つ英国、フランス、米国が有利に経済を運営することができたのに対し、植民地や有力な生産基盤を持たないドイツや日本は極めて不利な状況に置かれたからである。
世界恐慌の時代と異なり、現代ではマネーやモノのグローバルな移動はより活発になっている。ある程度のブロック化が進んだとしても当時のような閉鎖的な状況にはならないだろう。
ただ経済がブロック化すると、世界経済全体での生産に非合理的な部分が生じ、経済活動の効率性が悪くなる。またどこのブロックにも所属しない国にとっては、各ブロックとの通商協定の内容によっては著しく不利な状況に置かれる可能性も否定できない。
日本は貿易で国を成り立たせていることに加え、エネルギーや食糧などほぼすべてを輸入に頼っている。日本ほど自由貿易の恩恵を受けてきた国はないといってよいだろう。その点では、世界経済のブロック化が進んでしまうと、日本企業は少なくない影響を受ける。できるだけ早いうちに内需型の消費経済に移行し、外需の影響を受けにくい体制を構築しておく必要がありそうだ。
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