内閣府が発表した「社会意識に関する世論調査」の結果をめぐってネット上でちょっとした騒動が発生した。調査結果では、現在の社会に全体として「満足している」と答えた人が65.9%と過去最高になったが、一部の人はこの結果に違和感を持っている。ニュースのコメント欄などを見ると「公務員にだけアンケートを取ったのでは?」といった皮肉もあり、調査対象の偏りを疑っているようだ。しばしば経済的な状況と庶民の感情は矛盾する結果をもたらすことがあるが、今回の世論調査はまさにその典型といってよいだろう。これは富裕層の人なら、注意を払っておくべきニュースであると筆者は考える。
内閣府は2017年4月3日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。現在の社会に対して全体的に満足していると答えた人は65.9%と、同項目が調査に盛り込まれた2009年以降では最高水準となった。労働者の実質賃金が低迷する中、意外にも社会に対する満足度は上がっているようだ。
この調査は18歳以上の日本国籍を有する人を1万人無作為抽出して行わており、何か不正がない限りはサンプルが偏るということは原理的にあり得ない。したがってこの結果は正しいと思って差し支えない。
満足度に関する過去の調査結果の推移を見ると、2012年までは40%台と低迷していたが、2013年から割合が急増し、2014年以降は60%台となり、その後もじわじわと上昇を続けている。
満足度が顕著に上昇したのはアベノミクスがスタートする前後からであることを考えると、アベノミクスの実施によって満足度が上がったと見るのが自然だろう。年齢の分布を見ても同じ結論が得られる。高齢者の方が社会に対する満足度が高いというのは以前からの特徴だが、アベノミクスのスタート以後、各世代で同じように満足度が上がっているので、やはり全体的な傾向を示していることは間違いない。
ではアベノミクスの期間中、庶民の生活はどうなったのだろうか。確かに株価や不動産価格は急上昇し、このタイミングで投資をしていた層はかなりの利益を得ることができた。実際、アベノミクスのスタート以後、平均所得が日本でもっとも高い自治体である東京都港区の平均所得は急上昇した。多くが不動産や株式の売却益によるものだ。