純粋に金融商品として考えるなら検討の価値アリ
ただ、今回の種類株発行に対しては、既存株主から批判の声も出ている。株式会社には株主平等原則という非常に重要なルールがあり、原則としてすべての株主は同じ権利を保有していなければならない。これが徹底されないと、新しくその会社の投資をしようという投資家がいなくなり、長期的にみて資金調達に制限が出てくる可能性があるからだ。
また最悪のケースとしては、特定の株主と経営陣が結託し、会社の財産などを不適切に使う可能性も考えられる。このため、一部の株主を優遇するような種類株の発行はできるだけ少ない方がよいというのが、株式会社の基本ルールになっている。
今回の株主総会では、会社側は種類株発行の意義についてかなり丁寧に説明したと言われているが、25%の株主からは反対票が投じられている。こうした大手企業の株主総会で2割以上の株主が反対するというのは、そうそうあることはではないので、やはり市場から完全な理解が得られている商品ではないと考えるべきだろう。
こうしたことを総合的に考えると、この商品が投資対象として魅力的なのかどうかは、やはりトヨタという会社をどう評価するのかという部分にかかってくる。もし、トヨタを高く評価し、今後の成長を期待しているのであれば、堂々と普通株を買えばよい。
普通株であれば、すでに2%程度の配当利回りがあり、今後、期待通りに会社が成長し、株価が上昇すれば、その分のキャピタルゲインをすべて教授することができる。
一方、この種類株を買う投資家というのは、将来、トヨタの株は値下がりする可能性があると考えていることになる。そうでなければ、キャピタルゲインの金額を減らしてでも、元本保証にこだわるはずがないからである。あるいは、トヨタという会社に関係なく、日本の株式市場全体に対して明るい見通しを持っていないという見方もできる。
いずれにせよ、会社の長期的な成長や、日本市場の長期的な成長には、多少、疑問を持っている投資家であることは間違いない。そうなってくると、配当があらかじめ決まっていることや、事実上の元本保証の部分を高く評価しているという解釈になり、トヨタの経営理念に賛同している投資家とは少し異なってくる。
総合すると、もしトヨタという会社には特別な関心がなく、純粋に投資商品として魅力を感じるのであれば、購入してもよい商品ではないだろうか?
逆にトヨタに投資をしたいと考えているのであれば、こうした商品ではなく、普通株での投資をオススメする。もしそこで投資に踏み切れないようなら、あなたのトヨタへの評価はその程度ということになる。