本当に注目すべきなのは米国の動向
中国国内の総電量消費量は2014年前半までは前年同期比5%台の伸びを示していたが、2014年後半から伸び率が鈍化し、2015年に入ってからはほぼ横ばいが続いている。輸出ほどの落ち込みは見られないものの、やはり2015年に入ってからの低迷は顕著といってよいだろう。
一連のデータから判断すると、少なくとも今年のGDP成長率については、中国政府が目標としている7%台から大きく下振れしていると考えた方が自然である。おそらく2%程度の成長というのが妥当なところだが、識者の中にはマイナス成長に陥っていると指摘する人もいる。
もっとも、中国の輸出が不振で設備投資が減少しているからといって、それが個人消費にまで悪影響を及ぼすとは限らない。中国は巨大な人口を抱えており、内需の絶対値が大きく、消費活動は簡単に冷え込まないからである。中国ので電子商取引大手アリババにおける商品流通総額は、伸び率が低下しているものの、拡大傾向であることに変わりはない。公共事業の縮小と輸出の減少で産業界は苦しい状況にあるが、個人消費はそれほど大きな落ち込みにはなっていないようである。
中国は経済規模こそ大きくなったが、中国の景気失速が、全世界に対して深刻な景気後退をもたらすほどの影響力はない。なぜなら、中国は世界経済における最終需要地にはなっていないからだ。
中国の基本的な産業構造は、素材や部品を外国から輸入し、最終製品に加工して輸出するというものであり、高度成長期の日本とまったく同じである。つまり、中国は輸入した素材を加工して輸出する加工貿易の国であり、最終製品を購入する国ではないのだ。
世界経済の中で、もっとも豊かで、大量に製品を購入しているのは米国であり、最終的には米国の消費が世界経済の行方を決定することになる。米国は日本に対しても、中国に対しても、欧州に対しても、輸入が輸出を上回っている。つまり世界の製品をすべて飲み込んでいるのは米国ということになる。日本が中国に輸出した製品の多くは、加工されて米国に再輸出されているというのが現実だ。
世界経済が今後どうなるのかは、中国ではなく、米国の消費動向にかかっている。米国の消費が堅調なら、中国の景気失速はそれほど大きな問題とはみなされないだろう。逆に、米国の個人消費が低迷するようだと、中国が回復しても、世界経済は低迷することになる。