配当は魅力的だが国策企業ならではのリスク要因も
郵政グループ3社が他社と比べて魅力が大きいのは配当の部分だろう。それは郵政グループが国策企業であるという部分に大きく関係している。
安倍政権は成長戦略のひとつとしてコーポレートガバナンス改革を進めており、株主に対する利益還元を企業に強く要請している。国策企業である郵政グループは、こうした要請に応える必要があり、他社よりも配当には積極的だ。
同グループでは、配当性向を50%にする目標を掲げており、同じく売出価格を使って計算すると、配当利回りは各社とも約3%と計算される。実際に配当性向が50%になるのは2017年3月期以降のことであり、2016年3月期については、配当性向は25%程度に抑えられている。ただ、配当狙いの投資家は比較的長期にわたって株式を保有する可能性が高く、その点はあまり問題にはならないだろう。この配当利回りは、日本の大手上場企業としては高く、配当狙いということであれば、購入を検討してもよいかもしれない。
少し気になるのは、3社が親子上場という点である。親会社と子会社は、利益相反の関係にあるため(例えば、親会社が利益を上げようと、子会社に値引きを要求すると、今度は子会社が儲からなくなってしまうといった状況が発生する)、本来であれば、上場は推奨されない。
しかし郵政グループは国策企業ということで、政府が保有する株式の売り出し額を大きくするため、例外的に親子上場が認められた。これは、新しく株主になる投資家から見ると、あまりフェアな状況とはいえない。今のところ、親子上場の弊害は顕在化していないが、今後、3社のうちどこかの業績が悪くなるような事態が発生した場合には、親子上場の問題が取り沙汰される可能性がある。潜在的なリスク要因としては頭に入れておいた方がよい。
国策という点では、もう一つ考慮に入れておくべき話題がある。それは郵政グループによる日本株買いである。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、政府の意向を受け、資産運用方針の見直しを行っており、今後は積極的に日本株を購入する意向を示している。最大で14兆円もの資金が株式市場に流れ込む可能性があると市場関係者は見ている。自社の株式は買えないが、ゆうちょ銀行とかんぽ生命による日本株の積極購入によって市場全体が上昇することになれば、同時に3社の株価も上昇が期待できるかもしれない。
ただ市場全体の動向については、中国問題や国内の景気動向、米国の利上げなど、不透明要素が大きいことも、理解しておくべきだろう。