マイナス金利の効果は大きいので様子見が必要
ところが、マイナス金利が導入されても、市場は日銀が想定したようには動かなかった。銀行は、定期預金の金利を引き下げるなど、預金者から損失分を取り返そうという動きは見せたものの、積極的にリスクマネーにシフトする様子はない。また市場も、それを促す動きにはならなかった。
ではマイナス金利政策は完全に失敗だったのだろうか。確かに想定される効果は得られていないが、現時点で失敗だと結論を出すのは早計だろう。その理由は、金融機関はいずれ収益の低下という現実に直面し、何らかの資金シフトを迫られることになる可能性が高いからである。
日銀は今後も年間80兆円のペースで国債を買い続けることになる。単純にこの80兆円分にマイナス金利が適用された場合、年間で800億円もの損失が発生してしまう。これを放置することは不可能であり、銀行は何らかの収益源を見つける必要に迫られるだろう。
またMMF(マネー・マネジメント・ファンド)が運用難から相次いで販売停止されるなど、個人投資家の運用環境にも影響が及び始めている。いずれ、十分な投資機会が減ってくるという現実が顕在化してくる可能性が高く、そうなってくれば、マイナス金利が持つ影響力の大きさもあらためて認識されてくることになるだろう。
もちろん今の日本経済の環境で、すぐにインフレ、株高という流れにはならないかもしれない。ただ外国の債券や配当狙いの株式投資など、これまでとは少し異なった観点での動きが出てくる可能性もある。世界的な景気後退懸念というマイナス材料もあり、今、積極的にリスクを取る必要はないかもしれない。
しかし、過度な悲観から現金の比率を極端に上げ、殻に閉じこもってしまうのは少々考えものである。世界経済全体を考えれば、仮に米国の利上げペースが遅れたとしても、米国は緩和縮小、欧州と日本は緩和拡大という流れが続いていることに変わりはない。そしてマイナス金利政策は、理論的には確実に量的緩和策を後押しするものであり、リスクマネーへの資金シフトを促す政策である。
とりあえずは様子見のスタンスでよいが、市場が大きく動き出す可能性は考えておいた方がよいだろう。場合によっては、ポートフォリオを大きく見直すことも必要かもしれない。