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The Style Concierge

小山登美夫
アートへの投資「初めの一歩」

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欧米諸国では富裕層のたしなみとして認知されている現代アート。海外ではアートへの投資とは文化への投資であり、富裕層のステータスになっている。資産としても、数万円の作品が後に数百万、数千万円の価値に上がることもある。そうは言っても株や不動産ならともかく、現代アートは何を基準に買っていいのか正直よくわからない。そんな人のために、エンリッチでは楽しみながら行えるアート投資のノウハウをシリーズでお届けする。

*2016年に好評いただいた回のアンコール掲載です。

初回にお話を伺ったのは、90年代から日本の現代アートシーンを牽引してきた「小山登美夫ギャラリー」の代表をつとめる小山登美夫氏。現代アートの価格が高騰する仕組みから、日本と海外のアート市場の現状、購入の際のポイントまで、アート市場の最前線を知り尽くしたプロフェッショナルに聞く。

ENRICH(以下E):今回は「投資」という観点から現代アートについてお聞きしたいと思います。よく、オークションなどで有名作家の作品に数十億円という価格がついたことが報道されますが、現代アートの価格の仕組みを教えてください。

小山:ギャラリーに所属している新人作家が最初に展覧会を開く場合、値段はほぼ作品の素材とサイズで決まりますね。だいたい、110㎝×110㎝の作品だと25万円くらい。今やオークションなどで億単位で取引されている奈良さんの作品も1995年ぐらいはそのくらいの値段でした。作家の中にはギャラリーに所属しないでフリーでやってる人もいますが、やっぱりギャラリーがついている方が価格は上昇しやすいですね。デビューした作家が美術館のグループ展なんかに参加するとそこでも価格は高くなる。後は海外。海外のギャラリーが取り上げると海の向こうにもコレクターがつくので高くなります。

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この日は工藤麻紀子の作品が展示されていた

E:そうやって人気の出た作家の作品はオークションに出品されやすくなるのですか?

小山:そうですね。誰もがオークションに出られるわけではなく、オークション会社が目星をつけた作品だけが出品されます。ギャラリーなどの一次流通をプライマリーマーケットと呼び、オークションなどの二次流通はセカンダリーマーケットと呼びます。オークションで高値で落札されるとその価格がプライマリーにも反映されて、徐々に相場が上がってくると。ただ、オークションにはエスティメイトという落札予想価格がありますが、当然それ未満で落札される場合もあります。オークションに出たからといって、すべてに高値がつくわけではないんです。

うちに所属している工藤麻紀子さんという作家は、最初の展示会ですべての作品が売れました。それまで描きためていた作品も売れたから、その後は新作を描き続ける必要が出てくる。当然、人気が出るとプレッシャーがかかるし大変。そうすると2回目の展示会ができるのはだいたい2年後くらい。年間10~20作品を描くのが普通。次から次に大量生産できるものではありませんからね。人によっては年間1点という人もいます。

エンリッチ編集部

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