高齢者が若手アーティストの作品を買っていく欧米
E:日本は海外に比べてアート市場が活性化していないといわれますが、その理由を教えてください。
小山:ニューヨークや欧州のギャラリーは若者ではなく、高齢者の文化なんです。会社を売ったお金や、今まで買った絵を売ったお金で若い作家の絵を買いに行く。以前、工藤麻紀子さんの100万円くらいの作品を、ロサンゼルス現代美術館でキュレーター(展示や企画を担う役職)をやっていたポール・シンメルという人が買っていったことがあるんです。当時、まだ27歳だった日本の若手作家の絵をアメリカの美術館が買う。それもすごいなと。日本だとそういうことはあまりないですよね。あと、アジアの多くの国で、美術品に相続税がかからないのも大きいですね。アメリカでは美術館に寄贈すると税金が免除されるけど、日本にはそれがない。アートコレクターにとって旨味がないんです。
E:バブルの頃は日本でも大企業がピカソやゴッホの作品を買っていましたが、最近の傾向を教えてください。
小山:最近ではZOZOTOWNの前澤友作さんや、アース ミュージック&エコロジーの石川康晴さんなど、IT、アパレルの若手経営者がコレクターとして有名ですね。昔からのコレクションですが、軽井沢にあるセゾン現代美術館のコレクションはすごい。あと、ベネッセの直島は世界のコレクターの注目の的です。森ビルも森美術館を作って社会活動として美術を支えていくのも意義深いです。バブル期は日本製紙の齊藤了英さんがルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を119億円で落札したり、オートポリスがピカソの「ピエレットの婚礼」を落札したけど、今では両方とも海外。今「ピエレットの婚礼」が日本にあったらすごい値段、何百億になるでしょうね。