オークション参加者のリアルな声を聞く
15時を過ぎた頃から、ドリンクコーナーへの人足も増えてきた。ここで、オークション参加者に匿名を条件に話を伺ってみた。
デザイナーA氏 36歳
オークション初参加のA氏は、「オークションはもっと固い雰囲気なのかと思ってましたが、だいぶカジュアルな雰囲気ですね」と感想を述べてくれた。以前よりアートに興味はあったが、友人のアーティストの影響で自分でも作品を購入するようになったという。「購入する基準は自分が好きかどうか。コンセプチュアルアート(※1)が好きで、普段は青山や目黒のギャラリーを巡ってます」。
(※1)60年代以降に生まれた、作品本体よりもそのコンセプトや思想を重視するアートの潮流。
会社経営B氏 51歳
SBIアートオークションへの参加は4回目のB氏。友人が著名なアートコレクターで、その影響から自身も去年からアートを購入するようになったという。「香港のサザビーズにも参加したことがありますが、中国人の参加が多くやっぱり日本とはぜんぜん値の付き方が違いますね。作家も日本国内だけで活動している人と、海外でも活動している人とでは値段の上がり方が違います」。
好きな作家は、今や海外で億単位で落札される白髪一雄とのこと。購入基準はマーケットのプライスにもよるが、それよりもやはり自分が気に入った作品を重視して選んでいるという。この日もすでに200万円以上の某作品を落札済みだった。
落札総額3億円
成長途上の日本のアート市場
今回お話を伺った4名のうち、3名が知人の影響を受けてアートのコレクションをはじめている。アートを購入するきっかけは身内の影響が大きいといえるのかもしれない。また、オークション会場は単に作品を落札する場ではなく、コレクター同士が集まり情報交換をするコミュニティとしても機能していた。
まだまだ海外のアートマーケットと比較して日本の市場は規模が小さいが、参加者の多くは自分の好きな作品を味わいつつ、余裕を持って資産としてのアートを楽しんでいる様子だった。
SBIアートオークションは近現代のアート作品に特化しており、プレビューとオークションの見学だけなら事前の申し込みが不要(オークションの参加は要申し込み)。お目当ての作品がなくても数々の名作が落札される現場に立ち会い、アートの最前線を体感してみるのも悪くはないだろう。
なお、今回のオークションの落札価格総額は2億9,816万500円(税抜き)。落札率は80.6%だった。最高額は白髪一雄「胡鳥」の1,495万円。
取材協力:SBIアートオークション
TEXT:舩山貴之
撮影:杉山順平