著名なモータージャーナリストにして富裕層向けメディアのご意見番、そして当サイトでもコラムの連載を持つ九島辰也氏とともに訪れたアートフェア東京2016。
コンテンポラリーアートの魅力をお届けする後半レポートのスタートです。
*前半はこちら ⇒「アートフェア東京2016を歩く<前編>」
生きものを鮮やかに描く
新進気鋭のアーティスト
色使いが印象的な動物を描くのは、「H-art Beat Gallery(ハートビートギャラリー)」の今井龍満氏。
作品は筆でキャンバスに描くのではなく、エナメルを最初に上から垂らして描いているとのこと。「エナメルを垂らして描く絵は、仕上がりを100%コントロールできるわけではありません。それが私の作品の核です。人生も自分の思い通りにいかないことは多々ありますし」。家族全員がアーティストという今井氏は、最初は父の作品の手伝いからはじまり30歳を過ぎてデビュー。
描くモチーフはトラ、犬、カメ、カエルと多岐にわたっています。「動物の幅が広くて、どれも店や自分の家に飾りたくなる作品ですね」。
今井氏の父親は、1950年代にフランスから日本にアンフォルメル(不定型な抽象絵画)運動を持ち込んだ今井俊満。今井氏はエナメルを垂らすという主に抽象画を描く技法で動物をモチーフにした具象画を描いています。
伝統工芸と現代アートの
見事な共演
続いて訪れたのは白金にある「ARATANIURANO(アラタニウラノ)」、「ロンドンギャラリー白金」、「山本現代」の3ギャラリーによる共同出展スペース。
「ロンドンギャラリー白金」は、鎌倉時代に根来寺(和歌山県岩出市)で生まれた漆器「根来塗(ねごろぬり)」を展示。それに合わせた漆黒の絵画は、彫刻家にして現代美術家でもあるアメリカのリチャード・セラ(山本現代)の作品です。
黒漆の上に朱漆を塗った漆器を「根来塗」と呼びます。鎌倉時代に新義真言宗の僧徒が、寺内で使用するために製作した漆器が発祥になっています。
花柄の絵画は「ARATANIURANO」の作家、坂本夏子。日本の伝統工芸と日本の若手作家、そしてアメリカの巨匠という3者の共演。まったく違和感がありません。隣接したふたつの大きな絵画を見て「サイズ感が現代アートだね」と九島氏。