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The Style Concierge

三島喜美代 
今、世界が熱視線を送る作家

顕微鏡がおもちゃ代わり
一風変わった幼年期

E:どんなエピソードがあったんですか?

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三島:「なんで子どもは結婚せんとできへんのやろ?」と不思議に思って。フラスコでできへんかなと思って、それを医者の先生にいったらカンカンに怒られた(笑)。神を冒涜してると。そのころは顕微鏡でシラミとかノミとか、蚕とか青虫とか、自分の髪の毛とかなんでも拡大して見るような子どもだったから。父がおもちゃに買ってきたんですよ、顕微鏡を。母は虫が大っ嫌いだから全部捨てられたけど、それでもまた懲りずに集めてきて。

E:その遊びは何歳くらいまで続けてたんですか?

三島:高校に行っても顕微鏡は持ち歩いてましたよ。終戦後で学校に顕微鏡なんてあれへんから、生物の先生が貸してくれと。結局、顕微鏡ばっかり私は5台も持ってたんですよ(笑)。

E:そこからどうのように絵描きの道に進んだのですか?

三島:戦後、中学生になったときに美術の先生から「お、君は絵が描けるんやな。いっぺん、自由に描いてみいや」といわれて、じゃんじゃん描いてたらこれは面白いなと。うちの父が油絵の具やキャンバスなんか全部そろえてくれて。そこから学生展に出してるうちに絵が好きになって、毎日絵ばっかり描いてました。

ある日、私を取り上げてくれた産婆さんの息子、彼は三島というんですけどね、それが絵描きということを聞いて遊びに行きましてね。私より歳が一回り上だったけど、話が面白いんですよ。遊びに行くと毎日絵が描けるし話もできる。結婚してからも通ってたけど、家にいるよりもこっちの方が面白いなと。それで私は家出して、三島が追いかけてきたから一緒になって。三島は哲学も好きで、それが本当に面白くて徹夜でしゃべってました。

エンリッチ編集部

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