ストリートと現代アート
双方の歴史と文脈を踏まえる
E:ストリートアートと現代アートを融合させたスタンスの作家は他にもいますが、その大半は「ストリートアート」と「現代アート」という両極の要素の組み合わせにとどまっているように見えます。それに対して大山さんの作品は、現代アートの不文律を踏まえたうえで、ストリートやグラフィティの要素を取り入れていますね。
「FFIGURATI #88」
大山:美術館に荒々しいストリートアートを置くと、それだけで価値があるように見える場合があります。でも、新規性やショック・バリューだけに頼った展示は、一瞬は盛り上がるように見えるけど、目が慣れてくるとすぐに飽きられてしまう。オークションで一時の高値がつくのと同じで、作品自体に根拠がないから、瞬間風速だけで盛り上がってしまう危険性があるんです。少し前はオークション・ハウスに「アーバン・アート」のセクションがありましたが、それも最近は目にしません。
まずは現代アートとストリートアートの歴史や背景を押さえ、それが交差する地点を見極め、自分はどこに立っているのかを熟知し、そこを耕しながら作品化していかなければ、アートとして長く評価される作品は生み出せません。時間がかかるんです。
染谷:ただ、歴史や文脈に根ざしていない作品でも、オークションで価格だけが跳ね上がるケースもあります。ギャラリーではなく、いきなりオークションでデビューして、そこだけで流通しているのではと思えるような作家も見かけます。そういったケースではプライマリーの作品を直接オークションに出してしまうので、将来的に美術館での展覧会に繋がらなかったりします。経済的な部分が突出してしまうわけです。
E:ギャラリストの染谷さんから見た大山さんの魅力を教えてください。
染谷:大山さんの作品は視覚的にロジカルで、彫刻的でもあり即興的でもある。制作と批評活動もどちらかに偏ることなく両立させている。ビジュアルアートとしての作品の魅力と書かれた批評の魅力が一致しているところなどではないでしょうか。