“アート”を語りたいけど語れない…
そんな人が手に取るべき一冊が登場
「近代アートは、作家の人生の中で感じ取ったものを作品に反映させるなど、時代を垣間見ることができます。『今を見る』という視点は起業家にも求められ、こと成功者は時代の流れに敏感です。現在アートと共通・共鳴する部分は多く、だからこそ関心を持つ人が多いのでしょうし、これをフックにお互いのパーソナリティやインテリジェンスを図ったり、会話を楽しみます」
もちろんアメリカだけではなく、欧州や中国、中東やロシア、日本でもそれは変わらない。例えば、「ZOZOTOWN」などの運営で知られるスタートトゥデイの創業者、前沢友作氏はアートコレクターとしても有名で、2017年7月には123億円でアメリカの画家であるバスキアの『Untaitled』を123億円で落札した。メディアは価格のことばかり強調するが、同氏は元ミュージシャンで芸術的な感性の持ち主。何か共鳴するところがあり手にしたと推察できる。
「億単位の作品は珍しくなく、アート収集は金持ちの道楽と思われがちですが、それだけとは限りません。教養だけではなく、純粋に楽しみたい、若手作家を応援したい、資産形成など目的は様々で、先ほど申し上げた通り現在アートは時代を反映していますから、仮に反戦のテーマが込められているならチャリティに活用するなど、社会貢献に使われることも。ここからも、所有者の人柄やアートを集める意味を伺うことができます」
しかしながら、アートの世界は幅広く奥深すぎる。興味があったとしても知識がないまま足を踏み込もうとするのは、海図を持たずに船出をするようなものだ。インテリジェンスが求められるだけに「知らない」と言えないところもあるだろう。
実は、そんな人向けにとっておきの一冊がある。それが、三井氏が昨年12月に上梓した『アート鑑賞BOOK この一冊で《見る、知る、深まる》』(三笠書房)だ。
「アートの話をするには、作家のバックグラウンドや時代背景、作品に込めた思いを自分なりに解釈する必要があります。受け取り方は人それぞれで間違いはないのですが、歴史的な事実があったり、正しい美術の流れもありますから、自信をもって口にするのには、ためらうこともあるかもしれません。誰だって間違ったことを言うのは怖いですしね(笑)。本書は、そんな悩める人向けに美術を優しく説き、サポートするためのものです」と、三井氏は執筆の背景を振り返る。なんと、2年をかけて書き上げたという力作だ。