アート=これまでの歴史を知ること
“つながり”を意識すると理解が深まる
気になるのは、その内容だ。三井氏に伺ったところ…。
「簡単に言うと、イタリア・ルネサンス期から現代アートまで、美術の歴史と楽しみ方を網羅的に触れた一冊です。アートの歴史では過去から連綿と続いてきた流れを1本の線で結ぶことで、理解は一気に深まります。そういった点を意識しました」
例えば歴史を知る章では、ダ・ヴィンチやモネ、デュシャンといった、西洋美術の偉大な13人の革命家を時系列で紹介。読者は時間軸と作家軸の両面でアートの潮流を学ぶことができる。さらに、「アフリカン・アートとピカソ」や、「儚いもの」死を表現する寓意的な静物画の「ヴァニタス」の流れを汲んだ「アンディ・ウォーホール」、古代エジプト美術の「初期座像」を作品に取り入れた「ドガ」など、名画が生まれた背景にも迫るなど、様々な視点からアートの歴史や背景に切り込んでいる。
現代アートに触れる章では、押さえておきたい10人の作家を紹介。人物像や作品の特徴だけではなく、彼らのポリシーやバックグラウンド述懐しているので、現代アートの手引書としてもわかりやすい。アートを鑑賞することに加えて「所有する」際のポイントも列挙していて、幅広い美術の楽しみ方を提案しているのも特徴だ。
読み物として優れているだけではなく、実用書的な側面もある一冊だが、これだけ深堀りできたのは、三井氏の経歴にも深く関係する。その一つであるウィルデンスタインは1875年に仏パリで創業した、現在は4代目になるギャラリーで、これまでに世界の主要な美術館、著名なコレクターに優れた作品を収めてきたギャラリーだ。たとえば「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」に掛かるフェルメールはウィルデンスタインが納めた作品だし、モネやルノワールといったオールド・マスターの全作品集を作っていることでも知られる。