【紀元前~16世紀:古典となる美術の基礎をつくる時代】
〜美術の中心はエジプト、ギリシアを経てイタリア・ルネサンスへ〜
前提として、アートの歴史=メインストリームである西洋美術の歴史です。この流れを遡ることで、今日までの軌跡を辿ることができるでしょう。
そもそも、西洋美術の源流は紀元前5000年頃、エジプト文明から始まったとされています。ここでは、文明の発展と共に、太陽神やイシスといった神々を崇拝されるために必要とされた美術も同時に発展を遂げるわけです。こういった流れはギリシアにも受け継がれ、ここではゼウスやヴィーナスといったお馴染みの神々に祈りをささげる対象として美術が必要とされ発展していきました。いずれにしろ、アートは神と密接につながっていたたことがわかります。
ちなみに、エジプト美術や同時期に栄えたメソポタミア美術では、描かれる神や王族などの立像・座像は足がピッタリと合わせてあるか、開いていたとしても、それぞれの足にかかる比重は同じで、両足均等に重さが分散していました。
ところが紀元前330年頃、ギリシア・ローマ美術では軽く膝を曲げて、どちらか一方の足に重さをかけるようになりました。「コントラポスト」と言いますが、これにより彫刻は自然な姿となり、躍動感と生命感が生まれることに成功します。エジプト美術では、神を人間と異なる偉大な存在であることを民衆に訴える必要があったので、神の像は年齢がわからない表情、強大なパワーを感じさせるため不動の表情から生まれた造形が主流でしたが、ギリシア文明では神々の姿を、美しく最も理想的なポロポーションで表現したいと考えた結果、動きを持たせたと考えられます。
例えば、初期ギリシア時代のアルカイック期につくられたクーロス(ギリシア語で少年)像を見るとエジプト美術から影響を受けているものの、微笑みを浮かべているのが決定的な違いです。これを「アルカイック・スマイル」と呼びますが、神々を対象としていても、時代の変遷で表現方法は変わっていきました。事実、ギリシア美術の最盛期であるヘレニズム期に入ると表情はますます躍動的になり、「ミロのヴィーナス」が作られ、「ラオコーン像」は最高傑作と言われるほどです。