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The Style Concierge

Vol.2 現代アートとは? 2/2

同じ“アート”でも作家・作品によって
展開するフィールドが異なる

では、グローバル展開している作家・作品なのか、あるいはドメスティックな評価しかされていない作家・作品なのかどうかを見極めるにはどうすればいいのでしょうか? アートの初心者には難しいと思います。

というのも、アートの世界は入り組んでいて、初心者からすると一括りに映りますが、作家・作品によって展開するフィールドは異なります。スポーツに例えるなら、同じ野球でも大リーグがあれば日本のプロ野球、さらには社会人チームというように多くのリーグがあり、また硬式野球、軟式野球、ソフトボールともなれば戦うフィールドもルールも変わってきます。

ところが、この違いがわからないと、大リーグ級の作品を選んだつもりが、まったくフィールドの違うソフトボールの選手だったということが起きてしまうのです。あるいは、いまは高校球児でも、所属するギャラリー(チーム)が大リーグを目指しているとわかれば、価格が安いうちに買っておき、後の上昇を狙うといった資産運用的な側面をアートに持たせることもできます。知識を得ることで戦略的に楽しめるというわけです。

しかし本来、アートの本質は「所有する楽しさ」、これに尽きます。とはいえ、長年持ち続けていた結果、価値が上がれば言うことはありません。それを見込んで現代アートを買う方もいることでしょう。ところが、いざ手にしたものの、実はグローバルに展開していなく、まったく価値は変わらなかった…となると残念な話でミスマッチは避けたいものです。そのために、ネットで調べることもできますが、私のようなアートディーラーに相談いただくのもひとつの手です。

簡単にチェックすることもできます。その一つが、作品を扱うギャラリーが、海外のアートフェアに出展しているかどうかです。アートフェアとは、様々なアート・ギャラリーが一堂に集まり作品を展示販売するイベントで、鑑賞や売買だけではなくアーティストの認知度アップ、ギャラリストやコレクターにとっては情報交換の場になるなど、幅広い役割を担っています。世界各地で実施されていて、なかでもスイスのバーゼルから始まった「アート・バーゼル」は最大規模、アジアでは「アート・バーゼル香港」がも注目度の高いイベント、日本国内でも2005年から「アートフェア東京」が行われています。出展ギャラリーには創業年数や立地、扱う作家、年間の企画展回数、高額な出展料など高いハードルが課せられていますが、ブースを構えることで内外に強くアピールできという多大なメリットも。メジャーなアートフェアへの出展はグローバルに「世界に向き合うギャラリー」として、ブランディングにも効果的です。国内にはたくさんのギャラリーがありますが、およそ50軒は各地のアートフェアに出展しています。作家や作品が気になれば、まずはギャラリーやアートフェアを調べてみることです。

*2018年11月14日掲載


三井一弘(みつい・かずひろ)
アートディーラー/アート解説者、ミツイ・ファイン・アーツ代表、水野学園理事。

1970年横浜市生まれ。国内で現代アーティストとして活動した後、アートディーラーに転身。ウィルデンスタイン(NY)の東京店にて、イタリア・ルネサンス絵画や印象派、現代美術など、多岐にわたり取り扱う。2016年に独立し、現在は古典美術から現代アート作品までコレクターに紹介する傍ら、現代アートとアート市場についてセミナーで講演するなど、精力的に活動を行っている。


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▼三井一弘 著
 
「アート鑑賞BOOK この1冊で《見る、知る、深まる》」
知的生きかた文庫 1,058円
 
この本を読まずして、美術展に行くのはもったいない!
 
西洋絵画から浮世絵、彫刻、現代美術まで、アートをより深く楽しく鑑賞するためのポイントをたっぷり解説。気鋭のアートディーラーによる鋭い考察、知られざる秘話が満載の今までにないアート鑑賞解説ブックです。

エンリッチ編集部

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