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The Style Concierge

Vol.3 現代アートをカテゴライズ 平面編 2/3

平面アート:その④ 版画

手軽に複製できる版画は、平面のなかだと、もっともリーズナブルに手にしやすいジャンルです。木版、銅版、石版など原画に使う素材はさまざまあり、それこそ古来であれば手先が器用な作家だと、みずから彫刻刀などで素材を彫り原画を作り上げていました。

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ただし、インクが通過する穴と通過しないところを作ることで版画の版を製版する「シルクスクリーン」や、石灰石の版にインクで描画し、その上に弱酸性溶液の化学反応を利用する「リトグラフ」、コンピュータ技術を用いた「ジグレー」など、現在に至るまで様々な技法が開発されていて、仮に作家がよしとするなら版画を作ることがいまは可能です。

そもそも、巨匠の作品や、世界に1枚しかない作品を手に入れるには莫大な対価が必要で、おいそれと買うことはできません。ところが版画を使った複製品であれば手ごろな価格で購入でき、これもアートの初心者に向いたジャンルと言えるでしょう。

また、作家としても人気の作品であれば版画にすれば多くの人にいきわたり、それは生活の糧になります。一点モノは作画に時間がかかり、その間に忘れ去られてしまうことも……。これを避けるために複製品でニーズを満たすといった狙いもあるようです。

とはいえ、無限に複製しても付加価値は下がるばかり。原画は作家もしくはギャラリーが厳重に保管・管理するのが一般的で、刷り上がった版画もひとつ一つが厳しく管理され、仮に20枚作ったのなら「1/20」といった、シリアルナンバーが明記されます。単なる印刷物とは異なり、古く石板の時代から「限定して刷る=エディション」という文化があり、これにより複製とはいえ希少性や付加価値が担保されているのです。

ちなみに、使う素材や技法によって付加価値が決まるのではなく、あくまでも作家の人気や希少性で価格は決まってきます。銅版だと必ず高い、シルクスクリーンは安いということにはなりません。

ただし、銅版は柔らかいのでプリントを重ねることで原画が潰れて劣化するような場合は、最初のエディションである「ファースト・エステート」がもっとも価値が高く、「セカンド・エステート」「サード・エステート」というように、複製が繰り返されるにつれ価値は下がっていきます。

エンリッチ編集部

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