ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントの付加価値を見出す本連載。今回は、10月の消費税増税に伴い始まったポイント還元制度について解説する。ーー
エンリッチ読者の皆さん、ポイ探の菊地崇仁です。前回は、Visaが近畿日本ツーリストと提携してInfinite/プラチナカードのホルダー向けに提供する「Visaプラチナトラベル」、アメックスによるプラチナグレード以上の会員向けサービス」、ファイン・ホテル・アンド・リゾート」、「ラグジュアリーカード」のハイヤーサービス「ラグジュアリーリムジン」といった、リゾート特典の活用事例を紹介しました。プレムアム系クレジットカードの特典は数あれど、リゾート・トラベル系は充実しています。公私を問わず出かける機会が多い人こそ、積極的に使うべきです。今後も私の体験を通じて、その付加価値をお伝えしたいと思います。
いよいよ始めったポイント還元事業
キャッシュレス化に拍車がかかる?
10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられました。酒類・外食を除く飲料食品や新聞は軽減税率(8%)が適用されますが、それ以外の品目は増税の対象です。消費者の立場からすると異なる税率に注意しながら買い物をする必要が生じますし、事業者は自社に軽減税率対象の取引がないように見えても、打ち合わせや会食など、飲食関連の経費は対象になるので、対応が求められます。
また、軽減税率が導入されると、商品の仕入れや販売に対して標準税率と軽減税率の2種類が混在することになり、会計システムでは品目ごとに異なった税率を設定できることが必須になります。特に請求書等において、2019年10月から「区分記載請求書等保存方式」、2013年10月からは「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」と、必要な記載事項が2段階で追加されますから、しっかりと対応することです。
一方、今回の増税で注目されているのが、約2800億円の予算をかけて政府が実施する「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)」です。これは、事業対象の店舗で「キャッシュレス」で決済すると、2%もしくは5%のポイントが還元されるというもの。国としては増税で個人消費が落ち込んだり、政権への批判は避けたいもの。キャッシュレス決済を普及させたい狙いもあります。私たちが払う税金が原資なので微妙なところはありますが、来年6月まではこういった措置が取られ、現金払いよりキャッシュレスの方がお得になります。概要は以下の通りです。
■キャッシュレス・消費者還元事業の概要
・期間:2019年10月1日~2020年6月末(9カ月間)
・対象決済手段:クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済など
・還元率:5%(中小や個人事業者が運営する店舗)/2%(コンビニなどのFC店)/なし(大手スーパーや百貨店、未登録店舗)
気になる決済事業者ですが、クレジットカード陣営ですと、JCBやアメックス、三井住友トラスト・カード(ダイナースクラブ)、三井住友カード、三菱UFJニコス、ビューカード、クレディセゾン、オリコ、ジャックスなど、国内主要カード会社は、ほぼ網羅しています。とはいえ、カード会社はたくさんあり、自身が保有するカードが該当するかどうかは気になるところ。そこで経済産業省は10月上旬から本制度の専用サイトで、カード番号の最初6桁を入力すればポイント還元の対象か否かを調べることができるサービスを始めるようです。なお、他の決済方法については次のようになります。
■ポイント還元事業における主要決済事業者
・電子マネー(交通系):JR東日本(Suica)/PASMO/名古屋鉄道名古屋市交通局(manaca)
/JR東海(TOICA)/JR西日本(ICOCA)/福岡市(はやかけん)/nimoca/JR九州(SUGOCA)/スルッとKANSAI(PiTaPa)
※manaca、TOICA、はやかけんはポイント制度なし
・電子マネー(交通系以外):楽天Edy/イオンリテール(WAON)、セブン・カードサービス(nanaco)
・コード決済:NTTドコモ(d払い)/楽天ペイメント(楽天ペイ)/PayPay/LINE Pay/Origami Pay/メルペイ/KDDI(au PAY)/みずほ銀行(J-Coin Pay)
・コンビニ:セブン-イレブン/ファミリーマート/ローソン
・ECサイト:Amazon.co.jp/Yahoo!ショッピング/楽天市場
ザっと挙げるだけでも、現在国内で使われているメジャーな決済手段は、対象だといって差支えありません。9月13日時点で949事業者が登録を済ませています。
そう考えると、9月末でサービスを終了した「7pay」の件は、残念な話でした。ご存知の通り、同サービスは7月1日に始まった、セブン-イレブンの買い物に使える独自のスマホ決済サービス。ところが、開始直後の7月3日にセブン&アイ・ホールディングスは、第三者のアクセスによる不正利用の被害があったことを発表し、新規登録や入金を停止しました。背景には、登録時になりすましを防止する二段階認証がないなどセキュリティの甘さがあり、大手のサービスとしては詰めの甘さが指摘されていました。今回のポイント還元事業に7payが登録していたのかどうかはわかりませんが、いずれにしろ、コード決済の波に乗れなかったことは事実です。他方、同社には電子マネーのnanacoはありますから、こちらをフックにポイント還元事業に注力することはできます。今後の、消費者に対する信頼回復を期待したいところです。
ーーいよいよ始まった、キャッシュレス決済によるポイント還元事業。次回も引き続き、その詳細に迫ろう。