ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントの付加価値を見出す本連載。6月最後は、新型コロナの影響で生まれた、キャッシュレスサービスを取り上げよう。(1/3から読む)ーーー
飲食店向けのモバイルオーダー&
事前決済サービスが続々登場
新型コロナは、キャッシュレスサービスにも大きな影響を与え、それにより新たなサービスがいくつも誕生しました。
そのひとつが、決済代行業のアルファノートによる、飲食店などに向けたスマホ事前決済サービスの「サキペイ」です。これは、電話番号を宛先にして行うSMS(ショートメッセージサービス)を利用した決済サービスで、ウェブサイトを持たない店舗でも、非対面決済・事前決済が可能になります。予約時に事前決済(Visa、Mastercardが対応)を案内できるので、テイクアウトやデリバリーに利用したり、無断キャンセルの防止にも役立つでしょう。
楽天も5月7日から、レストランやカフェなどの飲食店で、商品を事前注文・決済できるテイクアウト支援サービス「楽天リアルタイムテイクアウト」を始めました。こちらの場合は、利用者がスマホやウェブサイトから近隣のテイクアウト可能な店舗・商品を選び、楽天IDを使い事前注文と決済を済ませます。購入金額に応じて楽天ポイントをためることができ、たまったポイントは利用することも可能。当初は東京の渋谷駅および五反田駅周辺の飲食店187店舗から始まりますが、全国の飲食店に順次拡大する見通しです。
フィンテックベンチャーのTakeMeによる「TakeMe Order」、Showcase Gigが始めた「O:der」など、モバイルオーダーは他にも。ご存じのように、新型コロナにより営業自粛を余儀なくされた飲食店は、時短とともにテイクアウトやデリバリーを強化し、生き残りを図っています。こうした状況は今後も続く見通しで、消費者としても新型コロナを機に、中食への意識は高まりました。キャッシュレス決済だと現金の受け渡しがなく衛生的に安心で、飲食店としては取りこぼしがなく、利便性の高いサービスとして定着するかもしれません。
外食産業などへの支援としては、先払いを実施する事業者や、これをサポートする自治体もあるようです。なかでもユニークなのは、キャッシュレス・消費者還元事業をうまく活用した、星野リゾートによる「星野リゾート宿泊ギフト券」だと思います。
これは、星野リゾートの各施設(一部を除く)の宿泊予約時に利用できるギフト券ですが、その特徴は、利用開始日を2カ月先まで設定でき、有効期限は指定日から1年間になるという点。つまり、新型コロナで宿泊予約がない場合でも、星野リゾートは宿泊ギフト券を購入してもらうことで1年後までの宿泊を確保でき、6月末まではキャッシュレス・消費者還元事業により、企業としての持ち出しがなく、実質5%割引にできるのです。同社と消費者の双方にメリットが見いだせる手法と言えます。
新型コロナがきっかけにというのは皮肉な話ですが、外出自粛をきっかけに、キャッシュレスサービスは認知、利用されていくのではないでしょうか。サービス業に限らずさまざまな業界で導入される可能性があり、不動産であれば賃貸物件の家賃をクレジットカード払いにできるサービスが出始めています。
もしくは、すでに「国税クレジットカードお支払いサイト」「Yahoo!公金払い」により、国税や地方税のクレジットカード納付も始まっていて、最近であれば滋賀県大津市が5月よりインターネット経由で市税のクレジットカード納付を開始するなど、自治体独自の取り組みも見られるように。新型コロナ渦では、オンライン診療も初診から可能になりましたが、診療費をウェブ上で決済するサービスも始まっています。社会情勢の大きな変化は、決済インフラにも大きな影響を与えたようです。