ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今回はプレミアム系クレジットカードやポイントを取り巻く環境の振り返りや、2024年の動向を解説している。(1/3から読む)−−−
年会費無料のプロパーカードが登場
プレミアム系クレジットカードは二極化
近年は三井住友カードが「三井住友カード(NL)」など年会費無料のものも出てきましたが、一般的に他社との提携クレジットカードは年会費無料であるのに対して、クレジットカード会社が発行するプロパーカードは年会有料であるケースが多いとされます。ところが、また1枚年会費無料のプロパーカードが登場したのも、驚きでした。それが、JCBカードが2023年12月5日から発行を始めた「JCBカードS」です。
同社ではこれまでも、自社発行の「JCBオリジナルシリーズ」を展開し、なかでも「JCBカードW」は珍しく年会費無料で、高い人気があります。ただし、同カードは39歳までの年齢制限があるのに対して、カードSは年齢制限を設けていません。カードデザインはシンプルで、タッチ決済にも対応しますが、最大の特長は国内外20万か所以上の施設・サービスで利用でき最大で80%割引になる「JCBカードS 優待 クラブオフ」が付帯している点。電話料金を一定期間支払うと、スマホの画面が割れたきの修理費用を最大3万円分(自己負担額1万円/1事故)保障するスマホ保険もあり、Apple PayやGoogle Payにも対応します。パートナー店の利用でいつでもポイントが最大20倍、ポイント還元率は最大10%など、そのたまりやすさも高水準です。
ここ数年は、リーズナブルな年会費で持てるプラチナカードやゴールドカードが増えていますが、年会費無料でゴールドカード相当の特典があるという点で、同カードは目を引く存在です。
今後、プレミアム系クレジットカードは、二極化に向かうと考えています。先述したように年会費を抑えたカードが登場する一方で、ラグジュアリカードは年会費と入会金で176万円の「Mastercard Black Diamond」、ダイナースクラブも年会費と入会金で110万円の「ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカード」の発行を始めました。アメックスは「アメックス・センチュリオン」、JCBは「JCBザ・クラス」が最高峰ですが、これらに追随してワンランク上のカードを発表するかもしれません。
このように、同じプレミア系クレジットカードでも、招待制ではなく誰もが持ちやすいもの、扉は固く閉ざされて特定の人しか持てないハイクラス向けと、二極化は確実に進んでいます。ただし、カード特典はすでに出し切った感があり、ハイクラス系で魅力的かつ会員が納得する特典が用意できるかどうか気になるところです。モノではなく、普段行けない店舗やイベントに行けるなど、より付加価値の高いサービスを提供できるかどうかが、会員獲得のカギを握るのだと思います。
−−−プレミアム系クレジットカードの二極化は、大きなトレンド。新たなサービスの登場に期待したい。次回、1月最後は拡大の一途をたどるタッチ決済の動向や、クレジットカード×金融の動きを掘り下げる。