資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。4月はタイチ不動産の池田将洋氏をお招きして、ニューヨークの不動産投資をテーマに対談。締めくくりとなる今回は、投資目的の重要性について話し合うことに。
目的と戦略を明確にして臨むこと
内藤 ニューヨーク不動産投資は幅広い選択肢がある分、目的や戦略をハッキリさせて臨む必要があると思います。その点はいかがでしょうか。
池田 大別すると「節税」「相続税対策」「毎年利回り」「長期視点に立った絶対的な利益」が挙げられます。
内藤 例えば節税目的の場合、日米両国の会計制度を良いとこ取りした「加速度償却」を活用することで、大幅な節税が実現できます。
池田 通常、アメリカの不動産は居住用27.5年、商業用39年の減価償却が可能ですが、日本の場合は不動産の構造により償却期間が決まり、法定耐用年数より古い建物(木造22年、石・レンガ38年)は早期のスケジュールで償却できる「加速度償却」が可能です(法定耐用年数×0.2)。また、日本だと建物:土地比率がだいたい20:80であるのに対して、アメリカは建物割合が高く80:20で償却することが通例。こういった日米両方のメリットを利用することができるのです。
内藤 これにより、アメリカだと築22年を超えた木造中古物件は4年で償却できることになります。仮に1億円の物件だとすれば、建物割合の8割にあたる、8000万円を4年で償却しますから、1年当たり2000万円。この額を所得税の課税対象から圧縮できるのです。ですから、節税メリットが大きければ、利回りは1~2%と低い物件でも十分という考え方もできます。その後、開発の波に乗るなど物件がバリューアップすれば売ればいいですし、所得税の税率より不動産の譲渡益の税率が低いと差分も取れます。
池田 その通りです。木造の中古物件を狙っている日本人投資家は増えていますね。
内藤 ローンについても戦略的に考えること。日本だと「フラット35」などを利用してお終いですけど、アメリカは金融先進国なので、多岐に渡るファイナンスの手法があります。基本的にノンリコース(個人保証なし)で、ローンの借り換え、含み資産を使った再借り入れも可能です。うまく使いこなすと少ない自己資金で利益を伸ばすことができ、安い調達法もあります。ですから、ニューヨークだけでなく、アメリカで不動産投資を成功させるには、物件の目利きだけではなく、現金なのか短期・長期のローンか、借り換えをするかも含めて、ファイナンスにも通じる必要があるでしょうね。
池田 アメリカで外国人がお金を借りる場合、居住用で上限は70%。審査ありで金利は約5%。日本に比べると高いのですが、それでも他人資本で資産が増やせるのですから、それは良い手法だということです。
また、日本は物件を買うと価値・家賃は下る傾向に有りますが、アメリカは歴史を見るとずっと上がり続けています。それには、エリアの成長性もありますが、いざ買った場合、キャッシュフローがどうなるか、プロジェクションを立てて借入額を計算しないと、マイナスキャッシュフローになることもあるので、注意していただきたいです。