資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。8月のテーマは、クラウドファンディング。「クラウドクレジット」の杉山智行氏をゲストにお招きしているが、第3回目は、同社が対象としている国について話題が広がった。(Vol.1から読む)
なぜ、ペルーや欧州の投資商品なのか?
内藤 第1回目でもお話しいただきましたが、クラウドクレジットでは、ペルーの不良債権に投資するファンドを扱っています。多くの人も南米の国ということは知っていますが、ここを選んだ理由はありますか。
杉山 ペルーは「プチオーストラリア」と呼ばれる、鉄鋼石や銅が豊富な新興の資源国。2003年から2012年は中国の経済成長に伴う資源価格の上昇や輸出拡大による収益が大きく、「黄金の10年間」と呼ばれ、当時の経済成長率は76%を記録したほどです。
20世紀は貧富の格差が酷く社会主義が台頭しましたが、その結果、バラマキ財政により経済は破たん寸前に…。1996年には、在ペルー日本大使館公邸占拠事件も起きています。しかしながら、フジモリ政権以降は資本主義に転じ、適切な経済政策や財政健全化を図ったおかげで政府にもストックが貯まり、透明性の高い投資環境も整備されました。
経済成長率は南米トップクラスで、債務を大幅に減免すれば信用市場に復帰して中間層に移行できる可能性のある個人はたくさんいます。今後アメリカが利上げを実施すると資源価格が下がり耐える局面にはいる可能性はありますが、充分にそれに対処して「普通の景気循環である」として乗り切る国力もあると考えています。
内藤 日本人は、新興国=アジアというイメージがあり、ペルーをはじめとする南米の国は危険、不正や汚職、インフレといったネガティブな印象を抱きがちです。ところが資本主義の歴史はアジアより長く、きちんとしたマクロ経済運営がなされている国もあるということ。そのひとつが、ペルーだということですね。
杉山 その通りです。また、当社が扱うのは、不良債権に投資するファンド。すなわち、貸金市場にアクセスするわけですが、高金利とはいえ、アップサイド(上振れ)は1.1倍~1.2倍程度。東南アジアで盛り上がっている、不動産投資や株式投資には及ばない水準です。
アップサイドが小さいので留意すべきは、できるだけダウンサイドも小さくすること。ただでさえアップサイドが少ないのに、ダウンサイド(下振れ)が大きいと、魅力的な投資対象とはいえなくなってしまうからです。ならば、マクロ経済の頑健性が高く、ローカルの規制でお金が返ってこないというような心配がない自由主義国家、かつ経済が安定している国の貸金市場の投資商品を選ばないといけませんが、リサーチの結果、該当するのが南米の新興国であり、手始めとしてペルーをチョイスしました。
先進国よりはアップサイドが見込め、ダウンサイドのリスクもある程度であると見込めます。一方で、東南アジア諸国は貸金という業種にとっては規制がガチガチ、あるいはカントリーリスクが高くて入っていけないと判断しました。
内藤 なるほど。経済が安定していて、法制度も整備されている。外国人が貸付債権を購入して投資する環境として安心度が高いということですね。不動産投資と違い、現地に赴いて立地や物件、周辺環境をチェックする必要もありません。投資家は、クラウドクレジットのようなプロの目利きに適った商品から、選べばいいというのも手軽です。