資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。8月は、「クラウドクレジット」の杉山智行氏をゲストに、クラウドファンディングについて対談を行ってきた。締めくくりとなる今回は、これからの展望や課題について伺ってみた。(Vol.1から読む)
クラウドファンディングの目指すところ
内藤 クラウドファンディングの魅力は理解できました。しかしながら、日本での認知はまだ十分といえません。今後の展開をどのようにお考えですか。
杉山 このビジネスモデルは、アメリカや中国、イギリスが中心ですが、10年後には市場規模が全世界で100兆円ほどになるといわれています。中国を除く世界の銀行の貸付残高は、1京円ほどあると言われますが、リーマンショック以降は、リスクを取り過ぎてはいけないことから規制が強化され、こういった伝統的な金融機関は貸付を縮小せざるをえません。とはいえ、世界各国は日本のように人口減ではなく、お金を借りたいというニーズは旺盛です。そのギャップを埋めていくのが、クラウドファンディングの役割になっていくでしょう。
実際、アメリカの人口は約3億2000万人ですが、移民が多いことから、銀行にアクセスできない人が7000万人はいるそうです。そういった人に対する与信としても、クラウドファンディングは期待されています。さらに、日本のNISA(少額投資非課税制度)のお手本になった、本家イギリスのISAに、ソーシャルレンディングも含まれるよう、英政府は決定しました。来年6月から正式導入されますが、これにより個人投資家のマネーが多く流入されることが予想されます。
内藤 ソーシャルレンディングで得た利益が、イギリスでは非課税扱いになるということですね。日本でも採用されたら、巨額の資金が入るかもしれません。
杉山 イギリスでは、ソーシャルレンディングが育たないと、社会にお金が回らないと政府が判断した結果です。資金に余裕のある個人やヘッジファンドの資金を中小企業や個人に流すことで、経済を成長させようということ。日本以外の世界各国の銀行はリアルに預金不足ですから、こういったトレンドは広く波及すると思います。
内藤 一方、ソーシャルレンディング業界は黎明期を迎えた段階ですが、今後プレイヤーが増えるに従い、淘汰も起きるのでは?
杉山 それは大きな課題です。リーマンショックがあったことで、銀行の事業規模は小さくなりました。ところが、私たちの業界は、まだ同じような打撃を受けたことがなく、不況を経験していません。
今後、金融危機が循環的に起こるなかで、耐える時期にどういったパフォーマンスを出せるかどうかで、投資家からの信用も変わってきます。思うほどダウンサイドがなければ、オルタナティブ投資のひとつとして魅力を感じてもらえるでしょうし、見合わないなら信頼を失ってしまいます。
内藤 金融商品としての認知も大事でしょうね。いまは、投資経験に長けた人が多いでしょうが、知名度が広がるにつれて、利回りだけに惹かれて入ってくるケースもあるかもしれません。