資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。3月は、「現代アート」について、美術商・アートディーラーの三井一弘氏に伺ってきた。締めくくりの今回は、アート市場における現在美術の可能性についてお聞きしよう。
いま、現代アートが
注目される理由とは?
内藤 オールド・マスターを中心に、100億円以上もする美術品は、なかなか手が出せません。そこで、次なるものとして現代アートが注目されているのでしょうか。
三井 ビンテージカーの価格が上がるのは、市場に残る台数が減っているからです。ランボルギーニやフェラーリがそうで、1500万円が5000万円に、1965年に製造されたアストンマーチンなんて、今や1億7000万円もの値が付きます。
例えば2013年にエスティ・ローダーがピカソやブラックの傑作からなる最高峰のキュビズム・コレクション1160億円分をメトロポリタン美術館に寄贈して話題となりましたが、これにより78点の傑作が市場からなくなることになり、市場に残された名品は更に希少性が高まります。すると、新興のお客様はどうなってしまうでしょうか。買いたくても作品がないのですから、そもそも手に入らないのです。
一方、UBSのプライベートバンカーによると「過去5年間、富の7割はアジアから生まれている」ということですが、彼らはルノワールやセザンヌを買うことができません。そこで目を向けたのが現代アートであり、ようは、「これまで」ではなくて「これから」の作家を狙うというわけです。だからこそ、アート・バーゼル香港のようなイベントも盛り上がりを見せています。安ければ数万円、100万円程度から始められますし、買うことで作家を育てていく喜びも味わえます。
内藤 三井さんが注目する、日本人の作家はいますか。
三井 例えば画家の工藤麻紀子さんは、独特な色彩と様々な要素が入り混じる、魅力的な作家です。海外で人気が高く、アジアでも支持を集めていますが、日本ではあまり知られていません。もっと紹介したいですね。
内藤 独特な引きこまれる感じがあります。何度も見たくなる、なぜか心に残りますね。