日本リスクを回避するのに、もっとも簡単な方法は、金融資産を外貨で保有することです。
例えば、ネット証券に口座を開設して、外貨で運用する金融商品を購入すれば、金融資産の日本リスクはすぐに回避できます。
ところが、そのような行動を取る人はナゼか少ないのです。ナゼでしょうか?その理由の1つが、ずっと続いてきた円高のトレンドです。為替市場の歴史を振り返れば、1973年に固定相場制から変動相場制に移行。当初、1ドル=360円で固定されていた為替レートは、変動相場制の中で、円高のトレンドが続きました。戦後から70年近く、1ドル=360円から、70円台までの円高が進んできたのです。
円高とは、円の価値が上昇することですから、円の預貯金を保有することが、最も安全な資産の置き場所になります。その過去の経験が、今なお多くの富裕層が、金融資産のほとんどを銀行の定期預金や国債などに振り向けている現状につながっているのです。
しかし、このような円高が今後もさらに続いていくのでしょうか?
資産の大半を円資産で保有している人は、円高が円安に転換するリスクに、さらされていることになります。デフレと円高という環境が、今まで続いてきた中では、円資産を保有するのが最良の戦略でしたが、今後も同じ環境が続くとは限りません。
例えば、為替に関して、もし円安になると思っているのであれば、円を売って外貨を買うのが普通の考え方です。逆に、円高になると思うなら外貨を売って円を買うわけです。では、円安になるのか円高になるのか、五分五分だと思うなら、どうするのが合理的でしょうか?
100万円持っているのなら、円を半分の50万円、外貨を半分の50万円というのが中立的な保有方法です。
もちろん、どこで生活するかによって変わってきます。将来使う通貨を考えれば、例えば日本に住むのなら、円の比率が高くなり、アメリカに住むのならドルの比率を高くすべきでしょう。
しかし、たとえ日本に住んでいるとしても、円を100%というのは、円高を予想する人が、合理的な通貨配分です。
円高になるのか円安になるのか、まったくわからないと思っているにもかかわらず、資産を円100%で持っているとすれば、自分が思っていることと、やっていることがズレている状態です。
日本で仕事をしていると、円で給料を受け取るのが普通です。円でもらったからそのまま何となく円で持っているというのは、合理的な行動とは言えないのです。
もし、あなたが会社の給料を来月から好きな通貨を好きな比率で受け取ることができるということになったら、どの通貨で受け取りますか?
そう考えると、円100%の資産配分の問題点が見えてきます。
日本の未来に悲観し、円安におびえながら、円の定期預金で資産を守ろうしている人がいますが、何だか考えていることとやっていることがチグハグな状態です。
これから自分の資産をどうするかを考え、行動するのに最も早く、ベストなタイミングは「今」です。少しずつ、外貨資産を保有することの大切さがおわかりいただけると思います。
外貨投資をする際、次に問題になるのが、外貨資産として何を保有するかです。外国の株式なのか、それとも外貨預金なのか?次回は、外貨資産の選択方法について考えてみます。
[catlist tags=”マネーCafe初回月” orderby=date order=asc]
内藤 忍(ないとう しのぶ)
株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
一般社団法人海外資産運用教育協会代表理事
東京大学経済学部、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。
大学卒業後、住友信託銀行に入社。
1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。
その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。
2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。
毎週発行する資産デザイン研究所メールは、購読者約12,000名と個人投資家の強い支持を受けている
(登録はこちら http://asset-design.jp/services/mailmagazine.php から)
セミナー、スタディ・ツアーなどの最新情報はこちら http://asset-design.jp/news/ から
早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務め、雑誌、ネットでの連載コラムを担当。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」など多数。最新刊は「究極の海外不動産投資」(幻冬舎)