内藤 仮に2%として、海外で10%の運用ができるなら、その差は8%。これなら、為替が年に8%円高に振れたとしても、カバーできる計算になります。ただ、今年はブレグジッドや米大統領選で為替相場が乱高下しましたし、過去にはリーマンショックなど、一気に動くことは珍しくないので、そういったリスクは承知の上で取り組まないといけません。ちなみに、金融機関を説得するには、どういった材料が必要でしょうか。
松石 現地の法制・税制、マーケット情報などをまとめた資料やデータがメインです。銀行は情報収集が不十分な投資家には融資できないでいる一方、買いたい投資家も借りられないというところでミスマッチになっています。そこで投資家の情報をトリミングし、このお客さんなら融資できるという条件に近付けていくといったイメージでしょうか。
金融緩和の影響により金融機関でも融資ノルマは増えていようですから、しっかりと安心するような情報を提示すると、金融機関も納得してくれます。少し前でしたら、「海外不動産は現金購入または高金利のフリーローンの融資を受けて購入」が前提でしたが、環境は大きく変化の時期を迎えているのです。
ーーー政府系金融機関や民間銀行が融資を始めているというのは、心強い話だ。次回は、こういったスキームを利用した手段のメリットや注意点をまとめてみよう。
松石滋樹(まついし・しげき)
松石滋樹公認会計士税理士事務所代表
1981年生まれ。東京大学経済学部卒業後、公認会計士2次試験合格後、新日本監査法人に入社。製造業や不動産業の一部上場企業の監査を担当するとともに、外資系ファンドが組成した不動産SPCの監査を担当した。現在は個人事務所に所属し、中小企業の会計・税務をサポートするとともに個人事業主の事業計画立案に携わっている。自身も国内・海外に不動産を保有する不動産投資家でもある。