内藤 日本では借金を返済していけば買った物件に対して余力が出てきますから、空いた部分を活用して追加融資を受けられますが、海外の物件は日本で担保にできず、家賃収入は生んでも、その資産を活かしてレバレッジを効かすことはできないようです。
松石 おっしゃる通りです。ただし、海外の金融機関では担保として使えますから、高金利の融資でも構わず、海外で資産を増やしていく予定なら、そういった戦略を取ることも考えられます。ところが、国によってルールや融資限度額は異なり、東南アジアの国々だと新築物件でも半額ほどと聞きます。
あるいは、本人に信用力があれば、最初に融資を受けた国内金融機関から追加融資を受けたり、与信枠を広げることもできます。その際は、担保はどうしたのか、収支は折り合っているのかといった実績はもちろん、本人の年収など属性も加味されます。
内藤 そう考えると、海外に収益物件を持ちたい人なら誰でもうまくいくのではなく、最初の段階はもちろん、その後も、ある程度の資質が求められるスキームですね。
最後に、税金についても税理士として簡単に概要をお聞かせください。
松石 当然ながら、日本人が海外で得た所得は日本で申告する必要があります。家賃収入も同様で、円に換算のうえ、日本の所得と合算して確定申告を行います。
内藤 ただし、国際的な二重課税を調整するため、海外で納付した外国税額を一定の範囲で日本の税額から控除する外国税額控除は使えると聞いています。例えば、日本で本来100万円の課税があったとして、アメリカで50万円分を支払ったとしたら、日本では残り50万円で済みます。
松石 外国税額控除はアメリカなど租税条約を締結していない国が相手でも適用されます。例えば日本とカンボジアとは租税条約を結んでいませんが、外国税額控除は適用することができます。
内藤 海外物件購入における資金の調達手段が広がったのは、投資家にとっては追い風です。国内に収益性の高い融資先がなくなってきて、海外不動産に融資している金融機関を横目にして、今後も参入は増えてくるかもしれません。あるいは、さらに使い勝手が良かったり低金利の商品が出てくる可能性もあります。
松石 現状では公庫がもっとも通りやすいのですが、私も開拓に力を入れているところです。また、新たなトピックがあればご紹介させていただきます。本日はありがとうございました。
内藤 ありがとうございました。
松石滋樹(まついし・しげき)
松石滋樹公認会計士税理士事務所代表
1981年生まれ。東京大学経済学部卒業後、公認会計士2次試験合格後、新日本監査法人に入社。製造業や不動産業の一部上場企業の監査を担当するとともに、外資系ファンドが組成した不動産SPCの監査を担当した。現在は個人事務所に所属し、中小企業の会計・税務をサポートするとともに個人事業主の事業計画立案に携わっている。自身も国内・海外に不動産を保有する不動産投資家でもある。