俊成 原宿、元町ともに新築物件で、弊社が一から開発に携わってきました。これだけの規模と立地だと、コストをかけても安定収益が見込めるからです。ただし今後は中古物件をリノベーションして収益性を上げたうえで小口で提供して参ります。弊社は北は札幌から南は博多まで支店を構えていますから、首都圏だけではなく全国展開にもトライしたいです。
実際、博多ではワンルームの賃貸物件の一部を、旅館業法を取得してゲストハウスにコンバージョン、賃貸部分もシェアハウスにすることで、旅行客と住民がコミュニケーションを取れるような形にする予定です。昨今、旅行客はショッピングだけではなく体験を重視するようになっていて、住民から地元の人気のスポットを教えてもらったり、案内役を買ってくれるとしたら、ゲストハウスとしての価値は上がるでしょう。一方で、シェアハウスに住む人は外国人と交流したいかもしれません。お互いのニーズがマッチするところで収益を生みだすことは可能ですから、そういったプロジェクトも進めています。これからは単純にハコをつくるだけではなく、時代に合った企画力、需要をつかんでいくことが非常に大事です。その立地における最も効率的に収益を生む物件をつくり、きちんと修繕を行いながら長期運用資産として小口で持っていただくのが、リノベーションを強みとするインテリックスができる「アセットシェアリング」の事業です。
内藤 扱う物件が増えると、投資家からするとリスク分散も可能です。いずれは、「原宿を売って元町を買おう」など、セカンダリーマーケットが生まれ、色んな物件を比較しながら取引できるようになれば、不動産小口化商品の市場も活性化するでしょうね。
俊成 現状は不動産小口化商品を扱うところが少なく、他社の場合は投資金額が1口1000万円単位など、ハードルも高いようです。なかには、住居や商業施設ではなく、駐車場を小口化している商品もあると聞いています。弊社としてもエリアだけではなく、物件タイプもオフィスなど幅を広げ、豊富なラインナップで商品を提供したいところです。税法の違いや管理の問題もありますが、法律上は海外の不動産を商品化することも可能なので、そこにもトライできればと考えています。
内藤 高齢者が増え、相続対策や資産運用ニーズは高まる一方で、金融資産だと金利がつかず、かといって自分でワンルームマンションを買ったり不動産投資は怖いと思う人もたくさん…。預貯金では不満だけど、通常の不動産投資には腰が引けるといった人に「アセットシェアリング」は向いています。
俊成 現金はあるけれど、このまま寝かしておいても…という人にこそぜひ、取り組んでいただければ。仮に退職金が3000万円あり、それでワンルームひとつを買うのは嫌だけど、「アセットシェアリング」で500万円分だけ買ったり、いくつか物件を分けることで、少額から分散投資をすることもできます。
最近は、父母に提案したい40~50代の子ども世代からの問い合わせが多いですね。親が土地を持っていて、それを受け継いでアパートを建てても、不動産は特にこれから経営目線が必要なので、事業として成り立つか悩ましいそうです。ならば、その前に不動産を組みかえて、相続・贈与時は評価を下げて受け継ぎ、その後も手間をかけずに収益を生みだしたいというわけです。
内藤 幅広い資産運用ニーズに応えられることこそ「アセットシェアリング」の魅力かつメリットです。今後、さらに市場が広がることを期待します。本日は、ありがとうございました。
俊成 他社からも問い合わせがあり、プレイヤーは増えていくと思います。弊社としても、創業当初はリノベーションのマーケットがほとんどなかったころから始め、リノベーション住宅推進協議会も立ち上げ、様々な会社が集まり標準化を進めたことで、金融機関の融資もつくようになり、いまでは中古住宅を買いやすい環境が整いました。次は、不動産の小口化商品で、新たな市場、セグメントを創出したいと考えています。こちらこそ、本日はお招きいただきありがとうございました。
俊成誠司(としなり・せいじ)
株式会社インテリックス 執行役員/ソリューション事業部長
1979年生まれ。米国ピッツバーグ大学経済学部卒業後、証券会社にて上場企業やJ-REITの資金調達業務に従事。その後、東京証券取引所の新部署設置に伴い参画。海外投資家へのマーケティングや新商品開発を行う。今後の個人の資産形成における不動産活用の重要性を強く思い、リノベーションにより価値を上げ良質なストックを供給し続けるインテリックスへ2010年入社。2013年同社財務部長を経て2015年より現職。