資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、資産形成にまつわる悩みや質問に答える、本シリーズ。今回のテーマは「アジア不動産投資」です。ここ数年、米国は政策金利を引き上げ、米中貿易摩擦の影響で中国経済にはブレーキがかかり始めています。いまは絶好の投資タイミングなのでしょうか。ーー
米国の金融政策と中国の景気減速によるアジア不動産投資への影響は?
Q(質問者):米国の金融政策と中国の景気減速によって新興国経済は大きくマイナスの影響を受けると言われています。アジアの不動産投資を検討しているのですが、しばらく様子を見てから投資した方が良いでしょうか?
A(内藤氏):確かに、新興国の経済はグローバルなマーケット環境の変化によってマイナスの影響を受けます。例えばアメリカが利上げを実施すれば、「米ドルを買って利息を受け取ろう」と考える投資家が増え、それに伴い新興国から資金を引き揚げる可能性があります。同国は2018年12月まで継続的に利上げを行ってきましたし、2019年中は追加利上げを実施しないと明言していますが、再び利上げ基調になると、さらに新興国投資は冷え込むかもしれません。
あるいは、米中貿易摩擦などにより中国経済が鈍化すると、同国富裕層を中心としたアジア諸国に対する投資熱にもブレーキがかかる可能性が…。GDP成長率の鈍化など、目に見えた影響はすでに出始めています。他にも、ロシアやブラジルといった資源に依存する比率の高い国では、通貨の下落や成長率の低下といった問題が表面化しています。国内の経済状態が悪化して、政治的なリスクも高まるかもしれません。
しかし新興国だからというだけで、「アジア不動産=危険」という画一的な思い込みをしてしまうことは、投資のチャンスを逸してしまう可能性があります。その理由はふたつあります。
ひとつ目は「為替」です。仮に中国が不景気になると、貿易相手国の日本にも悪影響は必至で、為替は円高に進む可能性があります。もしくは世界的に地政学リスクが起きると、日本円は危機回避通貨として買われる傾向が高く、いずれにしろ円高は進行する傾向が高いのです。
そして、円高が進むと日本人投資家が新興国に投資する際に必要な金額は下がる傾向にあります。購入してから円高になれば、為替差損になりますが、これから投資をしようとする人にとって円高は割安に買えるチャンスと捉えることができます。