資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、資産形成にまつわる悩みや質問に答える、本シリーズ。今回の質問者は、相続対策に悩んでいるようです。何から始めれば良いのでしょうか。内藤氏が答えます。ーーー
相続対策は何から始めれば良い?
Q(質問者):母の資産について、相続なども考えて対策を立てたいと考えています。何から始めたら良いか見当が付かないのですが、アドバイスを頂けますでしょうか。よろしくお願いいたします。
A(内藤氏): 相続対策というのはセンシティブなものですから、ご本人のお気持ちを考えながら進めていくべきものと思います。とは言え、実際に相続が発生してから対応するのは、被相続人になる人たちですから、必要な準備はしておきたいものです。
相続で一番の問題は、相続人の間で配分を巡ったトラブルの「争続」が起こることです。トラブルを防止するためには、財産を持っている本人の希望を健康なうちに確認しておくことです。必要であれば公正証書などの作成を行うのも一案です。
なお、争続を避けるために重要なのが遺言書ですが、これには被相続人が自筆で描いた「自筆証書遺言」と、先述した公証人により作成された「公正証書遺言」があります。前者は保管場所が決められていなので、自宅や貸金庫などを遺族が探さないといけませんが、後者は手元になくても最寄りの公証役場で検索ができるので便利です。
ただし、2020年7月からは法務局で自筆証書遺言を補完する制度が始まり、相続人が請求すれば内容などを知らせてくれます。こういった制度も活用すると、相続人のトラブルを避けやすくなるでしょう。
話を戻します。次にお薦めするのは、相続税の試算です。保有している金融資産、不動産などの明細を集めて、税理士に相談して現時点での想定相続税額を計算してもらいましょう。
その上で、何か対策を講じるべきかを考えていきます。具体的には金融資産から不動産へのシフト、借入の活用、資産管理会社の設立、優遇税制の活用などが考えられます。とりわけ、資産を現預金で持つと相続税は高くなる傾向がありますが、不動産にすることで圧縮が可能です。
相続税は富裕層だけに関係することではなく、より広く影響する税金になりつつあります。具体的な数値を計算してみることで、考え方が変わってくる人も多いと思います。先送りにするのではなく、信頼できる専門家を探して相談してみてください。