資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、資産形成にまつわる悩みや質問に答える、本シリーズ。今回のテーマは「保有不動産の売り時」について。何か目安はあるのでしょうか。ーーー
不動産の売り時はどう考えたら良い?
Q(質問者):不動産の売り時というのは、どう考えたら良いのでしょうか。買ってからどのくらい保有してから手放すなど、ルールのようなものはありますか?
A(内藤氏):確かに買い時を説く不動産投資の本はたくさんありますが、売り時を解説したものは、危機感を煽る本以外にあまり目にすることはありません。
不動産の売却をするタイミングとして、いくつかの要因が考えられます。
1つは資産の入れ替えです。年数が経過して築年数が古くなってきた物件を新しいものに入れ替えたり、区分所有が複数増えてきたら、まとめて売却して1棟物件にスイッチする。資産を改善するのが目的です。一般的に賃貸物件は築古になるに従い、空室リスクを抑えるため家賃を引き下げたり修繕費用がかさむなど、収益性が低下します。保有物件を入れ替えることで、ポートフォリオをリフレッシュします。また、区分所有が複数あると管理に手間がかかりますから、1棟アパートやマンションに入れ替えて集約すると、そうしたことからも解放されます。
2つ目は想定していた環境の変化です。例えば新駅ができると見込んで購入しましたが、開通時期が大幅に遅れることになった。周辺に新しい建物ができて環境が悪化した……。そんな想定外の事態が発生し、改善の見込みがないなら、投資目的に合わなくなってしまいます。一旦退却する判断をしなければなりません。
3つ目は割高だと判断する時です。周辺エリアが投資ブームなどで急激に価格上昇し、保有している物件が利回りから考えて投資水準として高すぎると判断したら、売却して利益を確定すべきです。どこまで上昇するかに答えはありませんが、国内不動産の場合、借入金利と利回り差が3%を切ってきたら、割高感が出てくると思います。
いずれにしても不動産投資は株式や投資信託のような金融資産の運用よりもさらに投資スパンが長くなります。個人で購入する場合は5年以内の売却は譲渡益に対して約40%の課税となりますから、利益の多くが税金に消えてしまいます。
最低でも5年~10年の投資期間で考え、その中での戦略を立てるのが良いでしょう。出口は遠い将来になりますが、購入する際にしっかりイメージしておくべきです。